さて。
ここまでブッセート、そしてパルマを訪れ、オペラ鑑賞と併せて街を観光し、それを記事にしてきた。
この後であるが、旅行としては、あと二泊している。
しかし、観光はもう「ない」。
ここから先は、オペラ鑑賞記しか書けない。
なぜなら、日中は移動だけだったから。飛行機で移動し、ホテルにチェックインし、休憩して劇場に行った。これだけだ。
だから書けない。どうか勘弁しほしい。
2018年10月8日 バルセロナ・リセウ劇場
指揮 クリストファー・フランクリン
演出 アンニレーゼ・ミスキンモン
「なに?バルセロナに行ったの??」
そうだよ。
「せっかくバルセロナに行って、観光何もしないの?」
そうだよ。なにか問題でも?
そんなことより、御存じの方も多いと思うが、名ソプラノ歌手モンセラート・カバリエさんが亡くなった。
しかし、今回の訃報で本物の衝撃と悲しみが走った場所は、間違いなくバルセロナだろう。
この日、リセウ劇場に行くと、劇場前入り口に記帳台が設けられていた。多くの方が並んで記帳し、祈りを捧げていた。
開演前にも、劇場支配人が登場して追悼の挨拶をし、その後、録音による彼女の歌声を流した。ベッリーニ「ノルマ」の「カスタ・ディーヴァ(清らかな女神よ)」だった。
場内に染み入る歌声。
放送が終わると、お客さん、そしてピットのオーケストラ奏者も、全員が総立ちとなり、厳かな拍手が沸き上がった。それはそれは感動的な光景だった。
カバリエさん、安らかに。
それではようやく本公演の感想について。
それらを堪能するためにバルセロナに行ったのだから、むしろ語るべきかもしれない。
だが、一人の歌手の驚異的な能力が、すべてを持って行ってしまった。
ハヴィエル・カマレナだ。
というより、ハヴィエル・カマレナの超高音だ。
彼が繰り出す「ハイD」の恐ろしさ。
人間業とは思えないのだ。こういうのを「奇跡」というのだろうか。これは生で体験した人じゃないと分からないだろう。
神様が授けた超絶的な技能。カマレナはそれを持っている。
ベッリーニを聴きに来たのに、カマレナのハイDの恐ろしさにすべてが吹き飛んだ一夜。
名歌手クフィエチェンも、新進気鋭で最近よく名前を見かけるようになったイェンデも、すっかり霞んじゃったなあ。
全体の演奏や演出のことだって書くこともできるけど、とにかく吹き飛んじゃったということで、以上にしとく。