クラシック、オペラの粋を極める!

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2017/3/16 カーチャ・カバノヴァ

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2017年3月16日   ザールランド州立劇場
ヤナーチェク   カーチャ・カバノヴァ
指揮  ニコラス・ミルトン
演出  ベン・バウアー
スザンネ・ブラウンステッファー(カーチャ)、ユディット・ブラウン(カバニハ)、カロリン・ノイカム(バルバラ)、ロマン・アスタコフ(ディコイ)、ミカエル・ベジャイ(ボリス)   他
 
 
ダフネもそうだが、このカーチャ・カバノヴァもまた知られざる名曲だと思う。物語は不倫がテーマだというのに、そこに寄り添うヤナーチェクの音楽のなんと美しいことか。
本当は感情の赴くままに身を委ねたい。だが一方でモラルが許さない。自分で自分を責め、悩む。愛とは、なんて苦しいのであろうか。
そんな一人の女性の葛藤や心情が、音楽をより美しくさせているのかもしれない。
 
感情とモラルの狭間に立ち、悩み苦しんだ末に求めたくなるのは、きっと神様からのお許しだ。
演出家は、作品の根底に信仰の救済が潜んでいることを見つけたのだろう。舞台上にキリストや十字架を登場させたのは、興味深いアプローチだ。
更には、登場人物の特異なキャラクターや、狭苦しいコミュニティ。演出家はこうした異常で閉鎖的で村社会的な人間関係を比喩して、転々と旅するサーカス一座の出来事に仕立て上げた。一見すると突拍子もないが、単なる思い付きでなく、十分に考え抜いた上での結論なのだと思う。ならば私は肯定的に捉える。
 
歌手たちの実力はローカル劇場とは思えないくらい高い。人口せいぜい20万程度都市の劇場カンパニーだが、1千万人以上いる東京の某オペラ団体の実力レベルを軽く凌駕してしまう。
スクロヴァチェフスキがこの地の放送交響楽団と組んで録音したブルックナー交響曲全集を聴けば、理解が出来る。この録音は、何もベルリン・フィルでなくてもウィーン・フィルでなくても、十分な鑑賞性に耐え得ることを物語っているが、劇場もまた然りということだ。
 
こういう実力のあるローカル劇場が、ドイツ国内には何十とあるのである。すごい国だ。そして、羨ましい国だ。