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2015/2/14 N響C定期

2015年2月14日  NHK交響楽団  C定期演奏会   NHKホール
庄司紗矢香(ヴァイオリン)
シベリウス  ヴァイオリン協奏曲
 
 
 ヤルヴィがN響を初めて振ったのは2002年1月。その後、再登板したのが2005年5月。
 このたった2度の機会、しかも前回から10年という年月を経た後でN響の首席指揮者に電撃就任というニュースは、驚きであった。その10年の間にヤルヴィは着々と実績を積み上げ、名門パリ管弦楽団音楽監督にまで上り詰めている。いわば世界のトップ指揮者の仲間入りを果たした大物だ。
 にもかかわらず、彼はまるで後ろを振り向いたかのように2度共演しただけの日本のオーケストラとパートナーシップを結んだ。よほどその時の共演が充実したものだったのだろう。
 
 今回のメインプログラムであるショスタコーヴィチの5番は、その前回2005年の際に採り上げた曲だ。これからN響と一緒に音楽を取り組んでいくにあたり、絆を深めた原点の曲を再び用意したと考えるのは、自然なことではないだろうか。
 
 そうした祝福すべき両者の結び付きとは裏腹に、仕上がった5番の音楽は、悲劇が重くのしかかるかのような悲痛な叫びだった。真実かどうかが議論の的となった暴露本『ショスタコーヴィチの証言』の中でこの曲のことを「強制された歓喜」と表現していたが、作曲家が本当にそう言ったかどうかはともかく、それを地で行くような演奏だったと思う。冷酷な弦の響きの第3楽章、戦車の蹂躙のような第4楽章、あたかも警鐘を鳴らすかのように響かせた管楽器のソロ・・・。
 
 先日のマーラー1番もそうだったが、ヤルヴィの音楽は方向性がはっきりしている。「この音楽は、こうだ」という主張が実に明快で潔い。曲の中でどの音が重要なのか、どこが頂点なのかを詳らかにするので、聴いている方としてはとても分かりやすい。的確なタクトの下、幾重にも織りなすハーモニーの中から鍵となるモチーフが浮かび上がる様は圧巻の一言であった。
 
 前半は、今や日本が世界に誇るヴァイオリニストにまで成長した庄司紗矢香のコンチェルト。
 一聴したところでは、オーケストラとの距離感を測り、抑制を利かせた理性的な演奏だったが、それはあくまでも表面上のこと。更に近づいて彼女の内面を探ってみると、そこに青白く光るバーナーのような炎が見えてくる。この内に秘めた炎こそが彼女の音楽上の源泉であり、生命線だろう。別に体を大きく揺さぶらせて弾かなくても、燃焼度の高い演奏は出来るという見本のようなもの。
 
 おそらくオーケストラとの距離感や抑制といったものは、全体を統率する指揮者ヤルヴィと共同で音楽を作り上げていく過程で生まれた、あくまでも副次的な効果だったと思う。
 
 
 ところで、本公演は前日の金曜も含めて全席完売だった。マーラー1番のA定期では完売にならなかったので、やはり庄司人気ということだろうか。だとしたら本当にすごい。
 まさか、コンマス堀氏のラスト公演に箔が付き、ファンが駆け付けたなんてことは・・・いやー、やっぱり紗矢香ちゃんのおかげだろうね(笑)。
 
 堀さんも長年本当にお疲れ様でした。一頃、楽団員のステージ衣装が黒で統一されているのに、一人だけ「紺」を着用していて、いつも心の中で「コンマスだからって、なに目立とうとしてるんじゃい!」とツッコミを入れていたのが懐かしいです(笑)。