クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2010/5/29 新国立 影のない女2

 23日に引き続き、二度目の鑑賞。前回と同様、結局やっぱり最後は‘溶けたアイスクリーム’になっちゃったのだが、今回はもう少しまじめにレポ書きます(笑)。
 
 音楽の勝利。これに尽きる。
 一言で言うとそういうことだが、二つの意味がある。まず一つは歌手の出来が素晴らしかった。特に主役の女性3人は特筆すべきもの。中でも皇后を歌ったE・マギーは集中力が研ぎ澄まされて、聴衆を釘付けにした。
 もう一つはR・シュトラウスの作品そのものの素晴らしさ。「シュトラウスの最高傑作」と評する人は多いが、私も同感である。
 
 問題は演出面。
 演出家がこの難解な作品を研究した形跡は見られた。
 石の衝立と木の家。これらは、霊界と人間界、冷たさとぬくもりなどを対比させる表現であると同時に、場面転換の舞台作りも兼ねていて、工夫されている。さらに、石の衝立は、皇帝が石にされてしまう暗示の役割も持つ。葉や根を持った木のオブジェは「生命」を表し、針金で形作られた馬や鳥のオブジェは透き通った生物で、影を作らない霊界を表しているのだろう。
 だが、「だから?それで?」という感じで、 結局、演出家の考えるこのオペラの本質という物が伝わらない。(少なくとも私にはよく理解できなかった。もし演出家の意図を射抜いた方がいらっしゃったら、是非ご教示いただきたい。)
 
 また、最後の場面で、男の子と女の子が出てきてじゃんけんゲームをしていたが、私から言わせると余計な演出、視覚的な邪魔でしかない。なぜならばわざわざそんなことをしなくても、「子供たちに託された未来への希望」は、音楽で十分に語られているからである。
 
 
 数々のR・シュトラウスのオペラの日本初演を手掛けた故・若杉弘さん。生前中、「是非この曲を指揮し、取り組んでみたい。」と語っておられた。立派な功績を残された故人であるが、もし心残りがあるとすれば、このことだろう。
 だが、こうして新国立のラインナップに入れてくれただけでもファンとしてはありがたかった。今回の上演で、この作品の素晴らしさに開眼し、魅入った方は多いと思う。
 願わくば再演を。出来れば演出を替えて(笑)。難しい相談ですか・・・。