2026年7月29日 東京都交響楽団 ミューザ川崎シンフォニーホール
フェスタサマーミューザKAWASAKI 2026
指揮 大野和士
竹澤恭子(ヴァイオリン)
ブリテン 青少年のための管弦楽団入門、ヴァイオリン協奏曲
シューマン 交響曲第4番
毎年恒例、クラシック音楽の夏の風物詩として定着しつつあるフェスタサマーミューザ。在京を中心とするプロオーケストラが一同に集結し、連日その腕前を競うかのように披露するフェスティバルだ。
とても良い企画だと思う。
単なる夏休みのファミリー向けコンサートにならず(一部そういう公演も見受けられるが)、音楽監督や首席指揮者といったポストを持つ指揮者が登壇し、その楽団の存在感を知らしめようとする意欲的な公演もあって、音楽祭をいっそう魅力的なものに飾っている。
時間とお金とフットワークに余裕があれば、連日足を運んで「どれが一番いいかな??」という聴き比べを楽しむのも一興であろう。
私の場合は、自分のスケジュールの中から、オーケストラと指揮者とプログラムをじっくり慎重に見定めて、「これは面白そう」というものだけをピックアップ。その結果、今年は大野和士&都響の一公演のみとなった。
本公演はいちおう二人の作曲家のメモリアルになっていて、ブリテンが没後50年、シューマンが没後170年ということだそう。
指揮者の大野さんは、特に今年ブリテンを取り上げることに対し、相当に意欲的だ。
3月にはなかなか演奏されない「春の交響曲」を演奏し、11~12月にはオペラ「ピーター・グライムズ」が控えている。
おそらく、単に「メモリアルだから」というものを越えて、この作曲家の音楽的な魅力を伝えたいという使命をひしひしと自覚しているからではないか、と推測する。
この日の演奏においても、ブリテンに取り組む大野さんの姿勢は、とにかく真摯。
「青少年のための管弦楽入門」なんか、サラッと楽器紹介をやっておしまいでもいいのに、決してそうしない。各楽器を登場させるだけでなく、楽器の音色の特性、変奏の妙、フーガ技法の面白さを一生懸命取り出そうとする。
真面目だなーと思った(笑)。いやいや、褒め言葉です。
2曲目のコンチェルトでも、その姿勢、アプローチは不変。ただし、この作品はちょっと扱いが難しい。
プレトークでも話していたが、作品の根底に反戦の精神が流れているため、そこを捉えようとすると、音楽が内向きに転じ、陰鬱を帯びてしまう。
ソリストの竹澤さんも、指揮者の音楽的方向性にとても共感しているが、深刻な響きが強調されてしまい、コンチェルトらしいヴァイオリンの妙技が伝わってこない。
いや、これは演奏の問題というより、作品の問題なのだろう。
難しい曲、とっつきにくい曲。これに尽きる。あまり演奏されず、マニアックな曲のポジションに留まっているのも仕方がないか。
メインのシューマン。
大野さんのアプローチは、ここでも不変。でも、それが功を奏した形となった。
個人的意見で、正直に言って作品そのものはあまり面白くない。
旋律も田舎っぽくて洗練されてないし、あまりにも形式的だし、演奏によってはチョー退屈になる。改訂してこれなんだから、初稿はどれだけつまんないんだよ、なんて密かに思う。(スミマセン)
だが、そこは指揮者の解釈と演奏によって、新鮮さを伴って蘇る。
様式を順守しつつ、ニュアンスや音型、リズムやテンポ、強弱を整え、曲想や各楽章の性格を浮き彫りにさせる。
また、各楽章を切れ目なく演奏することによる、壮大な絵巻図の完成も目論む。配布されたプログラムに「大きな幻想曲風」と書かれていたが、「なるほど、確かに~」と思った。
真摯に真面目に取り組んで成し得た結果は、実に爽快な感興だった。