
2024年10月27日 ヴェローナ歌劇場(テアトロ・フィラルモニコ)
ヴェルディ スティッフェリオ
指揮 レオナルド・シーニ
演出 ギー・モンタヴァン
ルチアーノ・ガンチ(スティッフェリオ)、カテリーナ・マルケシーニ(リーナ)、ウラディーミル・ストヤノフ(スタンカー伯爵)、カルロ・ラッファエッリ(ラファエッレ)、フランチェスコ・ピッターリ(フェデリーコ) 他
ヴェローナには、「アレーナ」フェスティバルほどの知名度は無いものの、常設の屋内オペラハウスもちゃんと存在する。それがテアトロ・フィラルモニコ。実は、フェスティバルもフィラルモニコも、両方とも同じ財団が運営している。
19年ぶり2回目の訪問。前回の公演はヴェルディの「エルナーニ」だった。
今回、スティッフェリオ、初鑑賞。
別に「ヴェルディのオペラ作品を全部制覇してやろう」などという大それた野望は持ってないが、海外で劇場を巡っていたら、結果的に何だかんだで結構観たような気がする。まだ観ていないのは、これであと3つくらいだと思う。
ところで、本公演の演奏が始まる際、ちょっとしたトラブルが発生した。
開演時間は午後3時30分だったが、定刻を15分過ぎても、一向に始まる気配がない。照明も暗くならず、オーケストラのチューニングも始まらない。
20分を過ぎてようやく会場が暗くなり、始まることになったのだが、ピット内のオーケストラが何だか変な事になっている。奏者が座る椅子は設置されているのに、いくつか空席のままで、人数が揃っていないのだ。しかも、一人や二人ではない。クラリネット・パートはゼロだし、コントラバス奏者は一人だけだし・・・間違いなく全体で10人以上は欠けている。
指揮者が登場。奏者が揃ってないのは明らかなのに、その状態で序曲の演奏を開始した。
いったいどういうこと??
序曲が終わり、会場からパラパラと拍手が起きると、その間に抜けていた奏者たちがゾロゾロとピットの中に入り始めた。第一幕が開く直前、ここでようやくオケ奏者が全て揃った。
これ、もしかして、オーケストラ労組による部分ストライキではなかろうか!?
分からないけど、そんな気がする。きっとそうだ。
とりあえず全ストライキは回避され、公演中止にはならなかった。それは結果として、本当に良かった。
だがそれにしても・・・。
イタリア、こういうことを平気でやる。恐ろしい。以前フィレンツェで、舞台装置機構の技術者組合がストを起こし、元々演出付きだったのに突然コンサート形式上演に変更されたことがあった。
頼むから、マジ勘弁してほしい。
さて、気を取り直して、公演の感想を。
タイトル・ロールのルチアーノ・ガンチが、圧巻の歌唱で聴衆を沸かせた。輝かしいリリコ・スピント。これぞヴェルディに必要な声。いや、かっこいい。
ガンチは、今年の4月、東京・春・音楽祭でR・ムーティが統率するアカデミーのソリストとして、「アイーダ」のラダメスを歌った。その時の印象は「まあまあ」だったが、今回のスティッフェリオは素晴らしく、強烈なインパクトだった。「F・メーリの後継者はガンチではないか!?」そんな風にさえ思ったくらいだ。
実はガンチは、2017年にパルマで上演されたヴェルディ音楽祭の「スティッフェリオ」に出演している。その収録映像がDVD、ブルーレイで販売されている。既にレパートリーとして、完全に手中に収めていたわけだ。
その他の歌手陣も強力で、隙がまったく無く、熱いヴェルディだった。
アンサンブルを含め、音楽全体を見事にまとめていたのが、指揮者のシーニ。
まだ若いが、既に世界各地の劇場に飛び回って客演していて、日本でも二期会の「ファルスタッフ」「ドン・カルロ」を振っている。イタリア物のスペシャリスト、劇場の叩き上げ指揮者として、今後益々の活躍が期待できそうだ。
ところで、このスティッフェリオは、数あるヴェルディ作品の中でも、初演の際にケチが付いた曰く付き。
「妻の不貞」から始まる物語。しかも旦那はキリスト教の牧師。スキャンダラスな内容に、初演当時には当局から検閲が入り、ヴェルディは改作を余儀なくされてしまうのであった。
そういう時代だったのだねえ・・。
今や不倫のお話は普通にドラマで見られるのにねえ・・。
‘された’方のスティッフェリオは、当然のごとく妻のリーナを非難し、離婚を迫るのだが・・・。
でも考えてみたまえ。
旦那は「仕事が忙しい」と言って、しょっちゅう留守にし、家を長く空けていたらしいではないか。
ちゃんと奥さんのこと、顧みてました? 奥さんは「本当はあなたの事を心から愛していたのに・・・」と告白するわけですよ。
旦那の方にまったく落ち度が無かったと言い切れる??
スティッフェリオは最後に許しを講じるわけだが、自分の胸に手を当てて振り返り、「うーむ、仕方ねえなあ」と思ったんじゃねーの?(笑)
