クラシック、オペラの粋を極める!

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ニールセン 交響曲第4番「不滅」

交響曲などクラシック作品には、標題が付いている物が少なくない。
作曲家自身が付与した物、他人が付けた物、なんとなくいつの間にかそのように呼ばれるようになった物、様々だ。
作曲家自身が付与していない物について、「作品タイトルとして扱っていいのか」という問題や議論はあろう。それはさておき、現実的には標題があると略称、呼称になって便利だし、親近感が湧くというメリットもある。
中には、日本語のネーミングが見事に絶品で、その日本語標題が作品そのものを完全に体現していると言っても過言ではない物もある。「悲愴」とかね。

そして、ニールセンの交響曲第4番に付いている「不滅」も、これまたまさにその部類に入ってくる。

「不滅」
いやー、めっちゃカッコいい響き。「永久」「永遠」を想起させる言葉であり、壮大かつ深淵で、実にイイ。

作曲家が付与したオリジナル原語を直訳すると、「消し去ることが出来ないもの」「滅ぼし難いもの」みたいな感じらしい。
それを、「不滅」。
いやー、カッコいい(笑)。
この日本語訳を付けた人(あるいは定着させた人)、グッジョブである。

何を隠そう、私がこの作品に出会ったきっかけも、たまたま手に取ったレコードのジャケットに記載されたタイトルに思わず惹かれたからである。
大学1年生くらいだったかなあ。カラヤン指揮ベルリン・フィルの録音盤であった。

聴いてみると、音楽もカッコよくて、思いきりハマった。クライマックスの例の2台のティンパニーの炸裂に興奮し、熱狂した。
「この曲、最高じゃんか!!」 そう思った。

当時、大学の管弦楽部に入っていた私は、ぜひこの曲を演奏したいと思った。
大学3年生の時、部の創立25周年記念定期演奏会で、大曲「ブルックナー交響曲第8番」に挑み、大いなる充実感と達成感を獲得したその翌年。学生生活最後の年、私はこの「不滅」をなんとしてもやりたいと思った。

定期演奏会のメインプロに何の曲をやるかについては、部内で決めるための手順があった。
まず、一般部員からやりたい曲を公募。その後、「選曲委員会」を立ち上げ、そこで議論して候補を絞り、決める。最終的な決定権は音楽監督(指揮者)にあったが、選曲委員会が上程した曲は尊重され、音楽監督がこれをひっくり返すことはほとんど無かった。
つまり、選曲委員会がどの曲を選ぶかが、運命の分かれ目だった。

委員会メンバーではなかった私は、ここで積極果敢に諜報活動とロビー活動を展開。地道かつ緻密な工作活動(何人かのメンバーにはコーヒーおごったっけな)が実を結び、私のイチオシ「不滅」は、ついに「最終候補に絞られた2作品のうちの1つ」になった。いいぞ!!

しかーし。
ここまでだった。あえなく落選。ガクッ・・・・。

委員会メンバーから落選理由を聞き出した私は、その内容に唖然としてしまった。
この曲を知っている方はお分かりだと思うが、後半部に、弦楽器においてちょっと難しそうな素早いユニゾンのパッセージがあり、視聴会でここの部分を聞いた弦楽器の委員たちが一斉に「難しそう」「多分無理」「破綻しそう」と怖じ気づいた、というのだ。

なんたること・・・。
情けないったらありゃしない。本当に泣けてくる。
アホか、おまえら。「難しい」だと?
だから何だ。難しいのなら練習しろ。それだけじゃないか。
あのさあ・・。逃げるなよー。挑戦しようぜー。俺たちはアマチュアなんだぜ。結果なんて誰からも問われない。自己満足、やったもん勝ちの世界なんだ。

ちなみに、最終選考に残った2曲のうちもう一つ、「不滅」と争ってついに栄冠を勝ち得たのは、チャイコフスキー交響曲第4番。「チャイ4」だった。

チャイ4かあ。チャイ4に負けたか~。ガクッ・・・・。

マチュア、シロウトって、ほんとチャイコとかブラー◯スとか、好きなんだよな。
私はアマチュアのマジョリティに負けた。連中の無難なオーソドックス志向に負けた。くそー。


大学時代のエピソードをもう一つ。
これは「不滅」というより、「ニールセン」に関して。

管弦楽部とは関係のない友人仲間の一人が、生意気にも学生の分際で休暇を利用しヨーロッパ旅行に行きやがった。そしたら、現地でデンマーク人と知り合いになり、お友達になった。
そのデンマーク人が、今度はそいつに会うため、はるばる日本にやって来た。(男女ではなく、男同士の関係です。)
友人は、さっそくそのデンマーク人をおもてなしするため、仲間を招集し、飲み会を催した。そこに、私もお呼ばれされた。
とは言っても、相手は日本語がまったく分からないガイジン。向こうは英語がペラペラだったが、我々は片言。楽しかったけど、結構悪戦苦闘した記憶が残っている。

そんな中、仲間の誰かがそのデンマーク人に質問した。
「ところで、童話作家アンデルセン以外で、世界的に有名なデンマーク人って、誰かいますかね??」

北欧からやってきた男は、こう答えたのである。
カール・ニールセン!」

ニッポン人一同、キョトン。「誰? それ?」みたいな。

その中で、「おお!! ニールセン! コンポーザー!」と声を上げ、立ち上がった人がいた。

オレ様である。
へっへっへ。

デンマーク人は、「Oh! You know him?」と言い、喜んだ様子で私に握手を求めてきた。
その瞬間、私は仲間連中から驚きと羨望の眼差しを向けられ、しばし優越感に浸ったのであった。
どうだおまえら。まいったか。

もっとも、その時点で私が知っていたニールセンの作品は「不滅」たったの一曲のみで、作曲家の顔すら知らなかったわけであるが・・・。
(ていうか、今でも顔のイメージは湧きません)