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2019/10/21 東京フィル

2019年10月21日   東京フィルハーモニー交響楽団   サントリーホール
指揮  ミハイル・プレトニョフ
合唱  新国立劇場合唱団
イルカー・アルカユーリック(テノール
ビゼー  交響曲第1番
リスト  ファウスト交響曲


プレトニョフは、ちょっと不思議な指揮者である。
タクトの見た目は、なんというか、掴みどころがない。力みがなく、いい意味で軽やかだが、充満するようなエナジーが感じられず、ぐいぐい引っ張る統率感もまるでない。「動」ではなく「静」。
あくまでも見た目で・・。

だからといって、音楽が見た目と同様に軽くて力がないかと言えば、決してそうではない。

おそらくプレトニョフに、タクトのかっこよさとかキレとかパフォーマンスとかはまったく眼中にないのだろう。
見つめているのは、スコアの中身。こだわっているのは、味付けではなく、素材の良さの引き出し方。自分が目立つのではなく、いかにして作品を際立たせるか。
そのように理解すれば、この指揮者がいかに素晴らしい音楽家であるかが分かるというものだ。

逆に、そういう理解に到達しないと、「掴みどころがない」で終わってしまう、ちょっと難しい指揮者でもある。
東京フィルは、この指揮者のそうした特性をすかさず見抜いたに違いない。特別客演指揮者として長きに渡る共演を続けているのは、それなりの理由があるのだ。

一曲目のビゼーについては、その力みのない軽やかなタクトが生きて、旋律やハーモニーの解放感がなんとも心地良い。

一転して、メインのファウストは、今度は逆に音楽が拡散しバラけないように、凝縮し引き締まった構成力が見事。
そうした音楽作りが功を奏し、この作品を聴く度にいつも感じる「長ぇ~」、「ラスト場面の取ってつけたような、無理矢理な高揚感はいったい何だ」みたいなのが感じられず、シンプルかつストレートな感動が沸き起こったのは、とても新鮮で良かった。