クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

バレンボイムが間違えた

バレンボイム、待望のピアノリサイタル。なんと、事件が起きた。
6月3日のサントリーホール公演。この日に予定していたプログラムは、ベートーヴェンの初期のソナタ、第1番から第4番であった。

そのプログラムが、何の告知もなく、いきなり変更になったのだ。

演奏されたのは、後期のソナタ、第30番から第32番。
これは、前日の6月2日の追加公演、それから6月4日、つまり本日の公演で予定していたプログラムである。
結局、東京での3公演は、すべて同一プログラムになってしまったわけである。

なぜこういうことが起こってしまったのだろうか・・。
バレンボイムは、すべての演奏を終えた後、マイクを持って登場し、陳謝と釈明を述べた。
その説明からすると、バレンボイム自身の単純な勘違いだったかのように思える。「インターミッションの時に、誤りに気が付いた」と述べ、しきりに「申し訳ない」と詫びていた。
一方で、SNS上では「主催側と演奏者のミスコミュニケーションではないか」みたいな意見、指摘も出ていたが、主催者からしてみたら「まさか、そんなことが起きるわけない」と大船に乗っていて、そこに想定外の事が起きてしまい、慌てふためいたものの時既に遅し、みたいな感じだったのではないか。やっぱりバレンボイムの単純ミスなのだろうと思う。

「インターミッションの時に気が付いた」というのなら、せめて後半は、当初の予定どおりのプログラムに戻す措置を取ってもいいはずなのに、後半も結局32番の演奏を決行。
バレンボイムからしたら、30番、31番と演奏して、そこに続けて3番、4番を演奏するのは、構成的にどうしても無理がある、との判断を下したのだと思う。


お客さんの反応はどうだったか。
ブーイングは出なかった。(そもそも飛沫対策のため、「ブー」の声を上げること自体が出来ないが)
一部がっかりした人もいたと思うが、会場の雰囲気は概ね好意的だった。
むしろ歓迎する雰囲気があった。

本当は後期ソナタの方に行きたかったが、チケットが買えなかった等の事情でやむを得ず初期ソナタの方を買ったところ、思わぬ形で後期ソナタを聴けることになり「ラッキー!」と喜んだ人が多かったのかもしれない。

それでも、「初期ソナタの方を聴きたかった」という人だって、少なからずいたはず。
これらの曲が演奏される頻度は、決して多くないのだから。

更に、複雑な胸中になった人たちがいる。
両方の公演のチケットを買った人たちである。
そして、私もその一人・・・。

「だったら、金返せよ!」と立腹するお客さんもいるかもしれないよな。
そりゃそうだよな。

私はどうか。

いつもなら、立腹してしまうかもしれない。「金返せ!」と心の中で叫ぶかもしれない。
でも、そうはならなかった。淡々と受け入れてしまったのだ。

なぜか。
正直に告白しよう。これはクラヲタとして非常にお恥ずかしい話なのだが。

私は、バレンボイムが違う曲を演奏した時、「ん?」「あれ?」という違和感は持ったものの、「おい、曲が違うじゃん!!」と真っ先に気が付かなかったのだ。

「あれ、第1番、第2番って、この曲だったっけ?? うーん・・・ま、いっか・・」

日ごろから偉そうにクラ通を装っているが、所詮この程度。
例えばモーツァルト交響曲やピアノ協奏曲だって、耳馴染んではいても、はっきり「第◯番!」と言い当てられない。第36番「リンツ」と第38番「プラハ」の区別は曖昧。要するに、そういうことだった。

そして、途中から「あ、これやっぱり違う。曲が違う。」と気が付いた時、次に脳裏によぎったのは、「この変更、既にインフォされていた既定路線だった?」ということ、それから「あるいはもしかして間違ってチケット買っちゃった?」ということ。
自分自身を疑ってしまったのだ。

確信が持てなかったので、休憩中に知り合いのKさんとお会いしても、そこらへんについて話題にすることが出来なかった。悲しいですな。

淡々と受け入れてしまった理由、その2。
バレンボイムが演奏するベートーヴェンの後期ソナタなら、例え同じプログラム公演を2回聴いても、十分にその価値があると思えるから。

大きな制約によって外来コンサートが出来ない中、奇跡的に実現した巨匠のリサイタル。
この機会は貴重なのだ。


ということで、今日もまた夜、行ってくる。
具体的な演奏の感想は、また後日ということで。

行ってみたら、またまたバレンボイムのうっかりミスで初期ソナタを弾いてしまい・・・なんてことは・・・あるわけないか(笑)。