クラシック、オペラの粋を極める!

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2019/11/30 マリインスキー歌劇場 スペードの女王

2019年11月30日   マリインスキー歌劇場   東京文化会館
チャイコフスキー   スペードの女王
指揮  ワレリー・ゲルギエフ
演出  アレクセイ・ステパニュク
ミハイル・ヴェクア(ゲルマン)、ウラディスラフ・スリムスキー(トムスキー)、ロマン・ブルデンコ(イェレツキー)、アレクサンドル・ドロフィモフ(チェカリンスキー)、アンナ・キクモーゼ(伯爵夫人)、イリーナ・チュリロワ(リーザ)、ユリア・マトーチュキナ(パウリーナ)   他


鑑賞したこの日の公演ではないが、今回の来日公演のゲルマン役には、ウラディーミル・ガルージンがダブルキャストとして名を連ねている。
ガルージンといえばゲルマン。
私は、今回を除き、これまでにスペードの女王を7回鑑賞したことがあるが、そのうち5回がガルージンなのだ。コヴェント・ガーデンでもパリでも彼だった。
いったいこれまで何回歌っているのだろうか。完全に代名詞。もはや名人芸、孤高の領域。
今回の公演でも、ガルージンの名を選んで2日目に足を運んだ人もきっと多いのではないか。

私はさすがにもういいや。パス。あえてガルージンじゃない方を選択。

ちなみに、私が初めてスペードの女王を生鑑賞した公演が、2000年のマリインスキー歌劇場来日公演。その頃はまだ「キーロフ・オペラ」と紹介されていた。当然、ゲルマン役はガルージンでした。

幕開けの序奏を聴いただけで、唸った。ああロシアの音だ。チャイコフスキーの音だ。厚くて渋くて、情緒的だけど、どこか荒涼としたサウンド
近年はどこのオーケストラもインターナショナル化が進み、特色のあるローカルな音色が失われつつあるが、このオケにはまだ残っている。(かろうじて、ではあるが。)さすがゲルギー。「チャイコフスキー・フェスティバル」を標榜するだけはある。
名人芸はガルージンだけじゃなかった。ゲルギエフだって、この劇場だって、この作品を数え切れないくらい演奏してきて、完全に手中に収めているというわけだ。

さて、「じゃない方」のヴェクア。歌唱も演技も少々粗削りのところがあるが、十分に聴かせてくれた。荒削りの部分は今後改善していけばいい。そうやって近い将来、ガルージンに引導を渡してしまえ。
リーザ役のチュリロワはとても叙情的で美しい歌唱。ただし、国際級歌手への道はまだまだこれからだろう。彼女もヴェクアと同様に、今後に期待。

ステパニュクの演出については、大変気に入った。シンプルで、モダンで、印象的。
何本ものカーテンのような柱が、示唆に富む。壁のようでもあり、扉のようでもあり、その動きに、心が開いたり閉ざされたり、といった心情描写が込められている。人物の動きをスローモーションにしていることも、現実ではなく妄想や想像の世界を展開させているかのようだ。

ところで、私の隣に着席した御夫婦(結構、お年)の、漏れ聞こえてきた会話、ていうか奥様が旦那に一方的に語るお話が面白かった。

「ああ、ギャンブルって怖いわねー。日本にカジノ作ったら、やっぱり危ないわねー。」
「リーザもバカよねー。どうしてあんなヤツに惚れるかしらねー。婚約してたんでしょ? 玉の輿に乗っかればよかったのよねー。」
「伯爵夫人は「カードの秘密を知ろうとする男に殺される」って予言されたらしいけど、あれってただの老人の心臓発作よねー。」

旦那さんはというと、「ああ・・・。ああ・・・。」と、聞いているんだか聞いてないんだか全然分からない相打ちをしているだけでした(笑)。