クラシック、オペラの粋を極める!

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ファビオ・ルイージ

前回のブログ記事で、パリとロンドンの人事情報をレポしたが、先月、東京でも大きな動きがあった。
ファビオ・ルイージN響の首席指揮者に就任」というニュースだ。

「おー、すげー」と思った。
ルイージは、言うまでもなく世界的な一流指揮者である。一時、「読響の指揮者になるのでは?」という噂が立ったが、結局はパーヴォ・ヤルヴィに続きビッグネームの招聘に成功したN響。やりましたな。さすがである。

絶好のタイミングだったと言えるだろう。
数年前まで、ルイージは世界でも最も多忙な指揮者の一人だった。(ゲルギエフの次くらい?)
それが、メトロポリタン・オペラの首席客演契約が終わり、チューリッヒ歌劇場音楽監督の契約が終わり、フィレンツェ歌劇場もあっという間に終了。残っているのは、デンマーク国立管とダラス響くらい。チャンスだった。それをうまくモノにしたというわけだ。

N響コンマスの「マロ」篠崎史紀さんは、次のように語っている。
「オーケストラ、特にN響の奏者たちは一人ひとりが優秀な音楽家であって、考え方や音楽の解釈も皆違う。そうした個性集団に一定の方向性を与えることが出来るかどうかが大きなポイントで、ルイージはその点において傑出していた。」

なんとなく「我々のような優秀な音楽家集団を導いていくのは、簡単じゃないんだぜ」みたいなプライドが滲み出ていて、いかにもN響らしいが、それはさておき、ルイージがカリスマ性を持った指揮者だということが分かる一例だ。

そのルイージも、何かのインタビューで「現代のオーケストラは命令されることを好まない。共同で音楽を作っていくことがベストのやり方だ。」と語っている。
また、これまでに何度となくN響に客演してきて、「サヴァリッシュら先人が築いたドイツ的なサウンドの伝統を感じた」とも話すなど、自身のキャリアでウィーンやドレスデンなどで手腕を発揮してきた経験と実績から、志向性の一致と、手応えのある確信を掴んだと思われる。


とりあえずの契約期間は3年とのこと。我々ファンからすれば、是非長きに渡って素晴らしい演奏を聴かせ続けてほしいという期待が高まる。

一方で、ルイージほどの指揮者なら、今後、更にビッグなオケ、一流歌劇場からお声が掛かる可能性も捨て切れない。その場合、短期政権で終わってしまうこともある。
さらに、過去にドレスデンフィレンツェでは、首脳陣との仲違いや方針の不一致などで、一気に辞任を叩き付けることもやらかしており、一緒にやっていくにあたっては慎重を期す必要もあろう。
(まずバーンと一発かまして、その上で相手の出方を伺う、というのは、外国人の常套手段だ。)

日本人は、そういう相手、そういうやり方の対処が、結構苦手だから。我が国の「謙譲の美徳」精神は、こと対外交渉術においては、通用しない場合があるんだよねー。