クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2008/10/12 びわ湖ホール サロメ

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2008年10月12日 びわ湖ホール
R・シュトラウス作曲 サロメ
指揮 沼尻竜典
演出 カロリーネ・グルーバー
大岩千穂(サロメ)、井原秀人(ヨハナーン)、高橋淳(ヘロデ)、小山由美(ヘロディアス)他


 過激な読替演出に終演後はブラボーが3割、ブーが7割。ブーしていた人はかなり怒っていたなあ。
私?そりゃもう、(一点を除いて)大ブラボーだ。
もともとサロメは狂気のオペラだ。約100年前の初演時の衝撃度はさぞかしすさまじかっただろう。その時に見せられた観客の怒りに比べれば、今回の演出家K・グルーバー氏が投げた挑発などかわいいものだ。シュトラウスが世に投げた挑発も、演出家の読替による挑発も、根本的に同じ物だ。

 グルーバー氏は単に観客を挑発するためだけに演出したのではない。それどころか現代社会が抱える問題に鋭くメスが入った超意欲的なプロダクションだ。
 複雑な家庭環境、かつてあったが今は冷めている両親の愛情、欲しい物を手に入れられないと我慢ならない性格、すぐキレる神経、体は成長しても精神的には幼いまま、それでも心のどこかで暖かい愛を求めている・・・今回のサロメはこのように仕立て上げられている。そういう人間が社会からの疎外感に苛まされて無差別殺人を犯す。今まさに起きている現実のニュースではないか!グルーバー氏はそこまで日本の暗澹たる事件を知っていたのか?それともこれは日本だけではなく、グローバルな問題なのか?世も末だ。そう、サロメとはまさに世紀末の作品なのだ!

 上に一点を除いて、と書いた。その一点とは、7つのヴェールの踊りの場面だ。この場面をグルーバー氏は、愛に育まれた幸せな家庭のシーンの追想にした。サロメ、ヘロデ、ヘロディアスが、娘、パパ、ママの楽しい一家団らん風景を演じた。その発想は面白い。しかし、妖艶な音楽と全く相容れない。完全に乖離してしまった。音楽がそこで何を語っているのかをもう少し注意深く洞察してほしかった。

 サロメを歌った大岩さんは、精一杯頑張ったと思う。チャレンジ精神も讃える。だが、本人のせいではなく、キャスティングした側のミス。シュトラウスに合う声ではない。その他の歌手は素晴らしかった。ヘロデを歌った高橋さんは、昔は歌い方や演技が野暮ったかったが、今キャラクターテノールとしてどんどん上手くなっている。ヘロデの小山さんはさすがというしかない。怖いくらいこの役にぴったり。

 沼尻指揮の大阪センチュリー交響楽団も大健闘。ということで、日帰りでわざわざ滋賀まで足を運んだ甲斐は十分にあった。オペラを見て、帰りの新幹線の車内で缶ビールを飲んでお弁当をつまんだ。旅行気分も味わえて楽しかった。