クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/10/30 ロンドン初日

10月30日、午前9時。私は、ロンドン郊外レイズベリーという誰も知らない町の無人駅で、大きな荷物を抱えながら一人ぽつんと立ちすくんでいた。茫然自失、だった。所持金、手元にある英ポンドはわずかな小銭しかない。これから私はいったいどうしたらいいのか・・しばらくは何も考えられなかった。

旅行の初日、最初の観光地をウィンザー城にした。今年3月にK くんと旅行した際、ウィンザーに行くかハンプトンコートパレスに行くか検討し、その時は結局ハンプトンにしたため、今回はウィンザーに行こうと決めたのだ。
実はウィンザー城はヒースロー空港からそれほど遠くない。うまく方向が合致すれば、着陸に向けて降下している飛行機の窓から見えることだってある。

私は最初に市内に入らず、到着した空港から直接ウィンザー城を訪れることにした。
とは言っても、ダイレクトな公共交通アクセスはない。距離にして約8~9キロ。タクシーで直接乗り付けてしまうことも考えたが、少しでも節約するため、ヒースローにほど近い駅までタクシーで行き、そこから電車に乗り換えてウィンザーに向かう計画を立てた。これは我ながらナイスなアイデアだと思っていた。

ロンドンに着いた時点のポンドの所持金は紙幣が50ポンドとジャリ銭。空港でオイスターカード(SuicaPasmoみたいな物)に10ポンドのチャージをしてしまったため、タクシーに乗り込む時点でおよそ40ポンドだった。日本円にして約8千円である。

タクシー乗り場に行くと、そこにはきちんとタクシー整理係の人がいて、白タクでないかをチェックしつつ乗客のスムーズな誘導を行っていた。その係の人に「レイズベリーまでお願いしたい」と告げた。係の人は「およそフォーティーン・ポンドですね。」と答え、タクシー運転手にも「それくらいだよね?」と声をかけた。タクシー運転手も「ああ、そうですね。」と答えた。

14ポンド・・およそ2500円。レイズベリーまでの距離はせいぜい6キロ程度なので、想定内の概ね妥当な値段である。車に乗り込むと、運賃メーターが無かったことに一瞬不安がよぎったが、最初に料金交渉をしたわけだから、大丈夫だろうと思った。タクシーに乗っていた時間は、15分から20分というところだった。

「フォーティです。」
レイズベリー駅に到着し、運転手にこう言われて、頭が真っ白になった。
「は??フォーティ??あの、すみません、フォーティーンじゃないの??」
運転手の方もポカンとしている。このアジア人は何を言っているのかと明らかに当惑の表情を浮かべている。

聞き間違い・・・だったのだ。認めたくないが、どうやらそういうことらしい。

いやちょっと待て。
そもそも、だ。たかだか6キロ、乗車時間15分でなんで8千円なんだ!?いくらなんでも高すぎるだろ?
ボッタクリにも程があるぞ、てめー。
運転手は相変わらずポカンとしながら、早く払ってほしい表情を浮かべている。

「ううっ・・・」
泣く泣く有り金すべてを差し出す。
「なぜなんだ!?なぜなんだぁ!!」

激しい後悔に苛まされた。この計画は我ながらナイスなアイデアではなかったのか?
これならまず地下鉄でロンドン市内に入り、チープ・デイ・リターンという往復割引切符で行った方が安かったではないか!?

時間を置いて少し冷静になり、これからどうしようか考えた。とにかく手元には小銭でおよそ3ポンドしかない。
何をするにしても、必要なのは金、金、金なのである。

決めた。とりあえずウィンザーまでは行く。ウィンザー城の入場料はカード払いが可能だ。ロンドン市内までの帰り
の切符だってカードで買えるだろう。食事もカード。何をするにしてもカード。カード払いが不可な物は買わないし、近寄らない。

バカ高いタクシー代は授業料だ。私は勉強したのだ。経験をしたのだ。決して無駄ではなかったのだ。
必死に自らに語り続ける私。

それにしても、フォーティをフォーティーンと聞き間違えるなんて・・・。
くっそー・・。