クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2008年9月1日 P・コンヴィチュニー講演会

日本ワーグナー協会主催による例会で、ドイツの演出家コンヴィチュニーの講演会に出掛けた。(場所:ドイツ文化会館(港区赤坂))

 私は日本ワーグナー協会の会員ではないのだが、ありがたいことに同会員のお誘いをいただいた。大変そそられたので、一般として参加させてもらった。

 いつかそのうちこのブログでも「オペラにおける現代的演出の是非」について、自分の意見を書きたいと思っているが、私も以前は、あたかも作品を作り替えてしまうかのような現代演出は嫌いだった。
 だから、コンヴィチュニーが演出して大変話題になったハンブルグオペラの「ローエングリン」(物語の舞台を学校の教室内に置き換えてしまう)の話題に眉をひそめたし、実際に生で見たミュンヘンでの「トリスタンとイゾルデ」で、第一幕の船上があたかも楽しげなハネムーン旅行のように置き換えられたのを目の当たりにして、耐え難い衝動に駆られたものだった。

 ところがある時、別の演出家であったが、現代的な読替演出によって、その作品のこれまで自分が気が付かなかった別の一面にスポットライトが当たり、視覚だけでなく音楽までもがこれまでと異なる主張を持って心に響いたとき、私の既成概念がガラガラと音を立てて崩れた。そして、その時から、P・コンヴィチュニーは、私の大好きな演出家の一人になったのである。

 1日の講演で、コンヴィチュニーは、「現代の劇場は政治的なメッセージを発信する義務がある。」と語った。100年以上も前に作られたオペラ作品の上演を見るのは、私たち現代人である。作品が作られた時代と今とで違いがあるのは当然だ。その現代人の視点で作品を捉えて、「自分にはこのように見える、こうとしか考えられない」というものを提示するのだと語った。
 そして、実際に自身が演出したパルジファルの一場面、オランダ人の一場面の映像を見せて、「この場面のこのシーンはいったいどういう意味なのか、自問した結果、私にはそれがこのように見える、だからこのように演出しました。」と具体的に説明を加える内容は非常に説得力があった。

 数えてみたら、氏の演出した作品を実際に生で見たのは9演目あった。わざわざ、氏の作品を見たいがゆえに海外に行ったこともあった。それ以外に、映像で見た物も含めると数はもっと増える。
 ただ、そうやっていくつも見てみると、似たようなコンセプトや、特定のパターンも散見する。是非マンネリに陥らないように頑張って欲しいと思う。そして、彼が演出する今度の二期会公演「エフゲニー・オネーギン」(9月12日から15日まで)をとても楽しみにしたいと思う。