クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

ゲルギエフ

 いやー、今回のプロコチクルスはゲルギエフさん久しぶりの特大ホームランでしたね。

 ところで、このゲルギエフ、本当になじみ深い指揮者である。なんと、私が最も多く生で拝聴している指揮者なのだ。これは驚き。崇拝しているムーティより多いんだから。

 なぜか、と言えば、理由は簡単で、たくさん来日してたくさん指揮しているから。マリインスキー歌劇場の引っ越し公演でオペラを3演目、4演目、全部一人で担当しちゃう。合間に歌劇場管弦楽団ともコンサートやるし、更に、日本のオケを振るために単独で来日もしている。だから一番聴く機会が多いんですよね。

 日本にだけ特別に頻繁に来ているわけではなく、サンクトペテルブルクに拠点を置きつつ、世界中を飛び回って指揮しているわけでしょ。それでいてあの広大なレパートリー。信じられないほどのバイタリティ。一体いつスコアの勉強をしているのでしょう??(笑)

 指揮の姿も独特ですよね。あの手のひらをヒラヒラ~と、まるで催眠術をかけているかのような指揮ぶり。指揮者物まねコンクールがあったら、マネされる指揮者No1!決定。


 私にとって、ゲルギエフで忘れられない名演に出会ったのは、2004年9月5日のウィーン。ムジークフェラインでウィーンフィルを振ったショスタコ11番。

 タコ11番が大好きな私は、この曲を是非ベルリンフィルウィーンフィルで、指揮はヤンソンスゲルギエフあたりで、いつか聴きたいものだなあ、なんて思っていたら、上記のとおり上演されることがわかり、「このチャンスを逃してはならぬ」と、そのためにウィーンに駆けつけたわけです。

 その公演は、まるで火に油が注がれたかのような完全燃焼コンサートで、曲さながらに壮絶な演奏で、聴衆を完全にノックアウトさせました。ところが、ゲルギエフは演奏後もニコリともせずに、蒼白な表情でカーテンコールを受けていた。

 あとで知ったのだが、この公演の直前に、ゲルギエフの出身地に近いロシア・オセチア地区で小学校が占拠され、子供達を含む何百人という多数の死傷者が出るという痛ましいテロ事件が起こった。(日本でも大きく報道された。)
 ゲルギエフはこのニュースに大きなショックを受け、一時、ウィーンフィルの公演をキャンセルすることも検討したそうだ。結局、契約を遵守して公演は行われたが、ゲルギエフにしてみれば、この演奏を犠牲者の魂に捧げたのであろう。偶然とはいえ、ショスタコ11番は、まさに犠牲者を出した悲劇事件への鎮魂がテーマとなっている。彼の祈りは、確実に犠牲者の魂に届いたと思う。

 ゲルギエフといったら、私は今でもこの上演のことを思い出す。きっと永遠に忘れることのない記憶となるだろう。