クラシック、オペラの粋を極める!

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2019/5/31 死の都

2019年5月31日   ザクセン州立歌劇場
コルンゴルト   死の都
指揮  ディミートリ・ユロフスキ
演出  ダヴィッド・ベッシュ
アレシュ・ブリスセイン(パウル)、マヌエラ・ウール(マリエッタ/マリー)、セバスティアン・ヴァルティッヒ(フランク/フリッツ)、ミカール・ドロン(ブリギッタ)   他
 
 
5年前の2014年3月のこと。レア作品である「死の都」が、新国立劇場びわ湖ホールの2か所で同月内連続上演された。もちろん、まったくの別主催、別プロダクション。
あれは奇跡だったなあ。
日本オペラ界の珍事と言ってもいい。もう二度とないだろう。
別に連続じゃなくて全然かまわないから、二期会でも外来でも、あるいはコンサート形式上演でも構わないから、またどこかでやってくれないか。
そう願っているのだが・・・まあ、諦めた方がいいのだろう。
 
本場ヨーロッパでも、頻繁に上演される演目では決してない。だから、もし自分の旅程計画中にこの作品を上演する劇場を見つけたら、私は常に、そして真剣に、そこに行くことを検討する。
 
そのとおり真剣に検討した末のドレスデン。今回はナイスなおまけが付いた。
私のお気に入り歌手であるマヌエラ・ウールがマリー/マリエッタ役なのだ。
 
この日、パウル役で予定されていたブルクハルト・フリッツがドタキャン降板したのだが、「だから何?」って感じ。
フリッツなんて最初から期待していなかった。
「死の都」を観られれば、それでいい。
ウールが聴けるのなら、なおいい。
ただそれだけなのだ。
(もしウールが落っこちたら、結構ショックを覚えたと思うが。)
 
私が彼女を好きな理由。声が瑞々しく、発音は繊細で、とにかく美しいのだ。
今回も麗しの美ボイスは健在。だから、音楽的には大満足だ。
一方、演技面において、この役(難役なんだろうね)を「完全に自分のモノにした」感が足りなかったのは、少々残念。
パウルを幻惑させるほどの官能的な魅力が、演技からは立ち篭めてこなかった。
 
おかしいなー。元々美人なのになー。
演出のせいか?
ま、そういうことにしとこ。
 
パウルの代役、ブリスセイン、本当に急遽だった模様。
幕が開く前、上演責任者が登場して今回のピンチヒッターについて説明した後、そこからさらに開演が10分遅れた。
説明がドイツ語だったので理解できなかったが、どうやらブリスセインの準備が完全に整っていなかった模様。もしかしたら、ぎりぎりまで演出的な指示を確認していたのかもしれない。
 
そのブリスセイン、声質は非常に良い。つまり、天性の物は備わっているとみた。
ただ、やっぱり急遽だったせいか、とにかくぎこちなさ満載。
それが歌唱にモロに影響し、不安定さを露呈しちゃっている。
 
まあ、こればかりは仕方ないよなー。
 
おい、トルステン・ケルルよ。この役の世界的第一人者よ。あんたいったいどこにいる?
ドレスデンに駆け付けること、できなかったのか?
おそらく主催側は、代役として真っ先にあんたの名前が頭に浮かんだと思うぜ。
 
などと、無いものねだりをしてみてもしょうがない。
 
ただし、お客さんはブリスセインに温かかった。急遽の代替出演を大いにねぎらい、大拍手で讃えた。
 
しかし、歌劇場ってのは大変だよな。
歌手がドタキャンすると、主催側に激震が走る。慌てて代役を立てて上演にこぎつけなければならない。ヘタすりゃ上演そのものが危ぶまれるのだから。(実際、私は昨年、キャストのドタキャンが理由で上演中止の憂き目に遭遇した。)
 
一方で、演奏側にしてみれば、こうして代役を掴むことが今後のキャリアのステップアップにつながることだってある。そうやってチャンスをゲットし、幸運を引き寄せた演奏家は、たくさんいるのだ。
だから、ブリスセインも頑張れ! 名前、憶えておくで!
 
・・・忘れちゃったりして(笑)