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2019/5/18 別府アルゲリッチ音楽祭

2019年5月18日   別府アルゲリッチ音楽祭   iichiko総合文化センター
ベスト・オブ・ベストシリーズVol.7  オーケストラ・コンサート
管弦楽  東京音楽大学シンフォニー・オーケストラ
ミッシャ・マイスキー(チェロ)、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
サン・サーンス  チェロ協奏曲第1番
リスト  ピアノ協奏曲第1番
 
 
マルタ・アルゲリッチを毎年聴けるという、最高にハッピーで、めっちゃ羨ましい場所。それが別府・大分。
今年で創設21年目を迎えた別府アルゲリッチ音楽祭だが、今年のオーケストラ・コンサートは格別と言っていいだろう。
 
セクハラ問題ですっかり干されてしまったあのデュトワが、日本に帰ってくる。
そして、アルゲリッチの良き音楽仲間である巨匠マイスキーもそこに加わる。
 
デュトワのタクトの下、二人の世界的奏者が繰り広げる豪華なコンチェルト。信じられないほど贅沢な機会が、東京ではなく大分にあるのだ。
 
もちろん、東京でもアルゲリッチは聴ける。
だが、前半プロは指揮者無し、メインのたった一曲さえもまともに振るのか怪しい某大物指揮者に振り回されながら、バカ高いチケット代を払うアホくささである。(ていうか、私はもうこの指揮者を完全に見限っている。)
 
ノープロブレム。別府に行けばいい。ただそれだけだ。
 
幸いなことに、今回の公演は土曜だった。仕事に支障はない。会場は大分市内だが、電車でおよそ15分の別府に滞在し、せっかくだから温泉にも入ってこよう。地獄めぐりしてこよう。(あくまでも、ついでに、ね(笑)。)
 
さて、その大物3人についてだ。
セクハラは軽々しく許されるべきではない。でも、もし彼が社会的制裁を十分に受けたのであれば、私は復帰を歓迎したい。純粋に彼の音楽が好きなのだ。
ご無沙汰のデュトワだったが、さすがにオーラが薄れ、小ぢんまりした印象。
もっとも、今回はソリストに敬意を表していた感じがするし、音大とはいえ学生オケだったということもある。仕方がないだろう。
音楽とは関係ないが、82歳、さすがにちょっとあの年齢不相応の増毛は不自然になってきたな(笑)。
 
ミッシャ・マイスキー
8年ぶりに聴いたが、一段と演奏に神々しさが増し、孤高の存在になりつつあると感じた。研ぎ澄まされた集中力と、音楽への没入の深さ。なんだかカザルスやロストロポーヴィチの域に迫ろうとしているかのよう。マイスキーの演奏だけでも十分にチケット代の元が取れそうなありがたさである。
 
もうとにかくこのピアニストの偉大さを一体なんと表現すればいいのだろう。ただただ言葉を失うのみだ。
 
信じられないような演奏に唖然としながら、私はなんとなくかつてと比べて彼女の演奏に変化が起きていることに気を取られた。
昔は、彼女自身の意識の有無にかかわらず、あまりにも強烈な個性と超然たるピアニズムが、予定調和を突き抜けてしまうことが度々あり、でもそれこそがまさにアルゲリッチだった。
 
今、これまでと同様に超然たるピアニズムを展開しながら、見事なまでに音楽全体の均性が整っている。
決して丸くなったわけではない。相変わらず燃焼度が高くて先鋭的なのに、叙情性が高まっているのだ。
これは、いわゆるひとつの「円熟」ってやつなのだろうか。
 
さて、話は変わって、公演の翌日のこと。
東京に帰る飛行機の便が、東京音楽大学オーケストラの皆さんと偶然一緒だった。
出発前のひととき、くつろぎの時間。私はロビーで隣に座っていた一人の学生さんに思わず声をかけてしまった。
アルゲリッチと共演できたのは、貴重な機会だったのではありませんか?」
学生さんは、見知らぬオヤジに突然話しかけられたにもかかわらず、きちんと返事をしてくれた。
「はい!おっしゃるとおりです! すごい経験でした!」
 
でしょうねえ・・・。
 
本当は、どんなリハだったのかとか、もっともっと詳しく聞きたかったが、やめた。それ以上は迷惑だろう。
にこやかに、目をキラキラさせながら答えてくれた。それで十分だ。
お疲れ様でした。今回の貴重な経験が、あなたのこれからの音楽人生に好影響を与えますように。
 
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