クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2019/4/21 バッハ・コレギウム・ジャパン

2019年4月21日   バッハ・コレギウム・ジャパン   東京オペラシティコンサートホール
指揮   鈴木雅明
櫻田亮エヴァンゲリスト)、クリスティアン・イムラー(イエス)   他
バッハ   マタイ受難曲
 
 
今年1月、ライプツィヒにある聖トーマス教会を訪れた。体調不良に見舞われてしまい、街歩きする元気がなかったので、教会の中に佇み、ポータブルでずっとマタイを聴いていた。
(さすがに全曲は聴き通せず、1時間くらいだったと思う。)
おかげですっかり体調回復・・とさすがにそんな都合良くは行かなかったが、それでも神聖な音楽を神聖な場所で聴いたことで、気分は落ち着き、精神は浄化された。あの日あの時、私は間違いなくバッハと真正面から向き合っていた。
 
マタイは特別な作品だと思う。バッハ作品という範疇を越え、すべてのクラシック作品の中でも偉大なる傑作である。たとえ物語は聖書に基づくものであっても、バッハの音楽が伴うことで、キリスト教信者ではない私たちにも、それが普遍の真理であるかのように心に響くのだ。
 
ただし、指揮者なら誰でもこの特別な作品に近づき、手掛けることが出来るかといったら、そんな簡単なことではないだろう。この曲を振る指揮者と演奏団体は、楽曲に対する深奥な理解と探求が求められる。
 
鈴木雅明氏とBCJは、絶対にその資格がある。彼らの演奏と活動、研究は、国際的に見てもまさに「模範」と呼ぶに相応しい。これほど崇高で極みにあるバッハ演奏を日本で聴けるというのは、もしかしたら奇跡と言ってもいいのかもしれない。
 
彼らが重視しているのは、バッハ作品そのものが放つ説得力だ。古楽演奏を通じて、余計な解釈や装飾といったものを削ぎ落とし、ひたすら原点に迫っていくアプローチ。テキストの理解にも最大限注力しており、キリスト役やエヴァンゲリスト役の歌い語りに、迫真を持って寄り添う音楽を構築展開している。
 
それだけに残念だったのは、字幕装置があればよかったのに、ということ。
字幕があれば、受難というドラマに、音楽がいかにインパクトのある貢献を果たしているか、聴衆がより深い理解を得られたに違いないと思った。(いちおう歌詞対訳&解説付きプログラムが売っていてけどねー。冊子を読みながらじゃあねー。)
 
一方で、字幕がなかったがゆえに、音楽により一層集中することが出来たとも言える。なので、一概には何とも言えない部分はある。
 
断言できるのは、とにかく、ひたすら濃密な時間だったということだ。