2019年1月5日 萩原麻未 ピアノリサイタル ミューザ川崎シンフォニーホール
年が明けて、気持ちも新たに、またコンサート通いが始まる。
さて、新年一発目はオール・ドビュッシープログラム。
同コンクールにおける日本人初優勝、一位を出さないことも多々ある難関コンクールの制覇ということで、一躍名を馳せたが、私は彼女の演奏を聴くのは初めてだ。
はっきり言ってしまうが、コンクールなんて所詮は新人の登竜門。難関であろうがなかろうが、そこで優勝したくらいで、盲目的に才能を信じ切ってしまうほど、私は浅はかではない。
今回の公演も、チケットを買ったのは、ただプログラムに惹かれたから。
まあそうは言っても、せっかくだから、そのピアニズムをじっくりと聴かせていただきましょうかね。
「喜びの島」までが前半。
その前半の演奏には、ちょっと「うーむ・・」と考え込んでしまった。
楽曲は十分に考え抜かれ、一音一音入念に磨きがかかっている。優しく、繊細で、ロマンチシズムに溢れている。ピアニストの「このように演奏したい」という心情がストレートに伝わってくる。
こうしてみれば、非の打ち所がない素晴らしい演奏だったように思える。
だが、あくまでも私の個人的な感想だが、思い入れが前面に出過ぎのような印象を受けた。
すみません、辛口で。
でもね。
後半、つまり前奏曲集では、これが一変したんだ。
作品の魅力を引き出すことに専念しているかのような献身さ。一曲ごとに表情が変わり、色彩の濃淡が描かれ、まるで展覧会の絵を鑑賞しているかのよう。
これぞドビュッシー鑑賞の醍醐味。
となれば、前半のアプローチはいったい何だったんだということになるが、まあでもベテランの演奏者だって、あるいはオーケストラを操る指揮者だって、前半と後半で違った顔を見せることはよくある。
それにしても、自分の個性と解釈を明確に打ち出しつつ、作品そのものの魅力も最大限に引き出す、というのはやっぱり相当難しいんだろうねえ。
プロの演奏家たちは、皆、それをひたすら目指し、日々鍛錬を重ね、楽曲を研究しているわけだ。