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2017/10/7 新国立 神々の黄昏

2017年10月7日   新国立劇場
ワーグナー  ニーベルングの指環より第三夜 神々の黄昏
指揮  飯守泰次郎
演出  ゲッツ・フリードリヒ
ステファン・グールド(ジークフリート)、ペトラ・ラング(ブリュンヒルデ)、島村武男(アルベリヒ)、アントン・ケレミチェフ(グンター)、アルベルト・ペーゼンドルファー(ハーゲン)、安藤赴美子(グートルーネ)、ワルトラウト・マイヤー(ワルトラウテ)   他
 
 
新国立のリング第二弾が、この黄昏をもって四部作完結した。
21世紀の幕開けとして2001年から始まった前回のK・ウォーナー演出版は、最先端を行く現代演出だった。誰が名付けたか「トーキョー・リング」と呼ばれ、一部のオペラマニア(私を含む)を熱狂させた。
 
しかし、初心者には優しいがマニアにはトコトン冷たい我が国の歌劇場は、これをあっさりと廃棄処分。
かといって、再び真新しく制作することも出来ず、フィンランドの倉庫で埃を被っていたプロダクションをレンタルすることに。それなりに洗練されたものではあったが、演出の意図がさっぱり分からない、穏当だがぬるま湯な舞台が進行することとなった。
 
チクルスが進むに連れて真の狙いが明かされるだろうとの期待は、ものの見事に肩透かし。結局、純粋に音楽に特化した指環、音楽にしか見出すものがなかった指環が完成したのであった。
 
もっとも、制作側(芸術監督)は、むしろそれこそを目指していたのかもしれない。ならば、まさに思うつぼ、してやったりということか。
 
主張をしない威張らない演出の中、ここぞとばかりに音楽の力、演奏の力を見せつけたい飯守さんの狙いは、7割は見事達成、3割は志半ばだったと思う。
 
渾身を込めてタクトを振ったその成果として、ワーグナー作品の偉大さ、壮大なスケール感は、十分に観客に伝わったことだろう。
「やっぱ、ワーグナーってすげーよな」
誰もが改めてそう認識したはずだ。
特に、四部作すべてを見届けた人は、一挙上演ではなかったが、あたかもフルマラソンを完走し、成し遂げたかのような充実感、爽快感を覚えたに違いない。
 
一方で、そうした感慨がどこから生まれたのかといえば、それはもう一にも二にも、出演した世界的なワーグナー歌手の卓越した歌唱力の賜物以外の何物でもない。
 
特に、ローゲ、ジークムント、ジークフリートの役をこなし、四部作すべてに出演して、そのすべての役で圧倒的な存在を見せつけたS・グールドこそ、このプロダクションの顔であり、最大の功労者である。
 
だとしたらさあ、もう恥も外聞もなく、こう宣言してしまえばいい。
今回の新国立リングは、「グールド・リング」である、と。
 
別にいいじゃんかよ。少なくとも聴いたお客さんは納得するよ。
グールドさん喜ぶぜ、きっと。
 
ついでに新国立劇場史上初の「カンマーゼンガー(宮廷歌手)」の称号を、この際彼に贈っちゃえばいい。(『どこがいったい宮廷なんだよ』というツッコミは、この際置いておいてさ。)
これで、これから新国立が制作するワーグナーやその他ドイツ物のヘルデンテノール役は、みんな彼が引き受けてくれる。
最高じゃんか。
 
どうだい、いいアイデアだと思わないかい?