指揮 ヤツェク・カスプシク
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
ヴァインベルグ ヴァイオリン協奏曲
ちょうど前回、「カテリーナ・イズマイロヴァ」の記事において、ソ連共産党から「ムツェンスク郡のマクベス夫人」が批判されたことで曲を改定したということを書いたのだが、同様の理由により、せっかくの初演の予定を取り下げざるをえなかった悲運の作品がある。
それが今回観賞した「交響曲第4番」だ。
改めて聴くと、そうせざるをえなかった理由が、すごくよく分かる。ショスタコーヴィチにとって苦渋の決断だったとはいえ、お蔵入りさせたのは正解だったではなかろうか。それくらい狂躁的で危険極まりない、恐ろしい曲である。もしスターリンが実演を聴いたら、きっと血管がブチ切れたことだろう。
現代において、この作品こそショスタコーヴィチの最高傑作と評価する人は少なくない。その評価も、私は非常に正しいと思う。
今回指揮をしたカスプシク、初めて聴いたが、実にガッチリとした手堅い音楽を作る人だと思った。
曲をデフォルメせず、スコアを忠実に解析し、解像度をマックスに高めることで、作品そのものの魅力を提示している印象だ。
その分、グロテスクさは影を潜め、狂乱的に叫び声をあげることもない。ひょっとすると、そこに物足りなさを感じた聴衆もいたかもしれない。
私はというと、作品に対する一つのアプローチとして、そのやり方を否定しない。あり、だと思った。
なんとなく、タクトを振る姿や、出て来る音を聴いていると、日本の秋山和慶を彷彿とさせる。似ている感じがしたのであった。
前半に登場したクレーメル。1947年生まれというから、もう70歳になったのか。