クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2016/8/6 パルジファル

2016年8月6日  バイロイト音楽祭
指揮  ハルトムート・ヘンヒェン
演出  ウーヴェ・エリック・ラウフェンベルク
ライアン・マッキニー(アンフォルタス)、カール・ハインツ・レーナー(ティトゥレル)、ゲオルグ・ツェッペンフェルト(グルネマンツ)、アンドレアス・シャーガー(パルジファル)、ゲルト・グロホウスキ(クリングゾル)、エレナ・パンクラトヴァ(クンドリー)   他
 
 
タイトルロールを歌うはずだったK・F・フォークトが落っこちたというのは、ショッキングなニュースだった。体調不良による降板とのことだ。
えーー!?嘘だろ!冗談だろ!
頭を抱える私・・・。
またしてもキャンセルだ! ネルソンスに続いてまたしても・・・。
 
正直に告白しよう。
自分は、海外公演における出演キャストに関して、結構運が悪いと思う。こうしたキャンセル、これまでいったい何度見舞われていることか。ホント泣きたくなる。
 
「フォークトの代役を務められる人なんかいないじゃないか!」
と思いきや、実はいる。
誰あろう、A・シャーガーだ。
彼のピンチヒッターは、まったくもって申し分がない。代役としてこれ以上の歌手はいないし、これ以上を望むことは出来ない。
フォークトが出演するのは今年のみ。来年はシャーガーが歌うことが決まっている。彼こそ、世界待望の真のヘルデンテノール。そのシャーガーのパルジファルは、既定路線なのだ。
 
だから、本当は別に嘆き悲しむ必要なんかない。もし他人様ががっかりしていたら、「大丈夫だって。シャーガーだよ!!最高だよ!!」と肩を叩き、励ますことだろう。
 
だというのに、当の私自身は非常にがっかりしている。
 
今年の3月、ベルリンで私はシャーガーのパルジファルを聴いている。だからこそ今回はフォークトで聴きたかった。
つまり、ただそれだけなのだ。
 
さて、気を取り直して公演を振り返ってみよう。
 
今年がプレミエの注目のプロダクション。頭を抱えるような意味不明でへんちくりんな演出ではなかった。それは本当に良かった。
 
演出家は、逃げず、恐れず、「宗教」に向き合おうとした。
アンフォルタスがキリスト教を、クンドリーがイスラム教を示唆し、象徴させた。
舞台にはこの他にも普通の観光客、銃を携えて治安任務に就く軍兵士なども登場する。現代において、異なる宗教の併存によって難しい治安対策を迫られているトルコやエルサレムなどの地方で見られる光景である。(ただし具体的な舞台設定場所については、よく分からなかった。)
 
一見すると、それぞれの違いを浮き彫りにさせて、あたかも対立を煽っているかのようだが、それが演出家の狙いではない。それだけを見て取るのはやや浅い。
 
演出家が見据えているのは、その先だ。対立や違いをどうやって乗り越えるのかという真剣な模索である。
 
どうやら、三つのキーワードが存在しているようだ。
 
「人間」「自然」そして「時間」。
 
第三幕では、豊かな緑や水が生命の根源となっていることを表している。また、老いたクンドリーが登場し、年月による加齢、衰えと、限りある命を表している。
 
つまり、「地球上に生を受けた人間の宿命を認識し、生命体の原点に立ち帰れ」というメッセージなのだと思う。
私はそのように読み解ったのだが、もしそれが正しいのだとしたら素晴らしいアイデアであり、壮大なテーマだと思う。
 
その最終回答が、パルジファルによる救済。そこで鳴り響くワーグナーの奇跡の音楽。感動がどーっと押し寄せる。胸がいっぱい、心が震えて止まらなかった。
なんて美しい!なんて素晴らしい!
 
キリストに見立てたアンフォルタス、クンドリーのイスラム衣装、花の乙女たちのアラビアン・ダンスなど、表層面しか見えなかった人たちはこの演出にブー。本質が見えた人はブラヴォー。そういうプロダクションであったと思う。
 
もう一人の代役、指揮者ヘンヒェンについて。
直前の変更による初登場だなんて、信じられない。彼がタクトで導き出した音楽は、紛れもなく本物のパルジファルだった。文句なし。比較なんかしたって仕方がない。無い物ねだりも同様。私は、ヘンヒェンを心から最大限に称える。
 
歌手では、この日もやっぱりツェッペンフェルト。二日連続だというのに疲れ知らずの圧倒的存在感。もうただただグレートとしか言いようがない。
 
ピンチヒッターのシャーガーは、カーテンコールで絶賛ブラヴォーの嵐。
だろ? そうだろ?
私はこうなることを最初から分かっていたのだ。
 
なお、ネット情報で評判を見てみると、K・F・Fの方も大絶賛だったらしい。
くそー、やっぱり私はそっちを聴きたかったよ・・・。
いつかどこかで聴く機会があるかな? チャンスを虎視眈々と狙ってみたい。