2016年2月23日 コンスタンチン・リフシッツ ピアノリサイタル 紀尾井ホール
ラフマニノフのピアノといえば、圧倒的にコンチェルトの2番と3番がポピュラーだが、個人的にはソロのソナタ、そしてこのプレリュードの方が好き。コンチェルトにはどことなく演奏効果と大衆のウケを狙っている部分が見え隠れしている気がするのに対し、ソロの方は純粋にピアニズムの世界に浸っていると感じるからだ。
で、リフシッツのラフマニノフは、まさにそうした特色が最大限に現れた孤高の演奏だった。
アプローチは、作品に向き合うことのみ。それだけ。ひたすら内に向かっている。そこに「どう聴かれるか」「どうすれば聴き映えがするか」「得られる効果は何か」などといった客観点はない。
そのためには演奏技術だけではなく、作品の世界観を受け止めるだけの演奏家の懐の大きさも求められるが、リフシッツにはそれが備わっている。
それゆえ、彼のラフマニノフは、とてつもなく奥が深い。音が深遠なのだ。だから聴いていると、みるみるうちに巨大な力によって引き込まれ、宇宙空間に放り出されたかのような感じを受ける。