クラシック、オペラの粋を極める!

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2015/9/28 ロンドン響

2015年9月28日   ロンドン交響楽団   サントリーホール
指揮  ベルナルド・ハイティンク
マレイ・ペライア(ピアノ)
アンナ・ルチア・リヒター(ソプラノ)
モーツァルト  ピアノ協奏曲第24番
マーラー  交響曲第4番


 ステージ上に登場し、人々の熱い視線が注がれる中であっても、冷静で落ち着いた佇まい。みなぎるような熱気や力強さはなく、まるで時間が止まっているかのような静かな空間。まるで武道の師範が構えを見せる時のような潔さ。
 演奏が開始されれば、あたかも瞑想するかのように自己の世界に没入しながら、造形を構築。色彩や情緒を排し、まっすぐで楷書のような峻厳な迫力を生み出していく。音楽は、正座をしているかのような真面目さ。

 ハイティンクは、昔も今も、いつだってこういう指揮者だ。その誠実な音楽を聴くために、我々はコンサートホールに出掛ける。

 マーラーにありがちな耽美さはない。雄弁さも濃厚さも苦悩もない。ひたすら実直なマーラー。それでいて、どこか客観的でさえある。

 正直に白状すると、揺らぎのない演奏、時に歩みを止めたかのような演奏に、「そこはもっと・・・」という箇所がなかったわけではない。
 でも、それがハイティンクなのだ。そういう指揮者なのだ。

 前半もそう。名人ペライアまでが「ハイティンクの時間と空間」に組み入れられ、冷静沈着なモーツァルトにお付き合い。でも、ペライア自身が円熟の域に入り、そうした音楽を何の支障もなくスムーズに受け入れていることに、思わず目を見張った。さすがベテランである。

 ペライアと対照を為していたのが、マーラーの最終楽章でソロを歌ったアンナ・ルチア・リヒター。綺麗な声でチャーミングな歌い回しだったが、ハイティンクの領域内ではなかったような気がした。
 まあそこらへんは、仕方がない。若く、まだまだこれから。楽譜と真摯に向き合っていたのはとても好感が持てたので、オッケーとさせていただきます。