クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

ライナー・キュッヒルとその奥さん

 御存知のとおり、ウィーン・フィルコンサートマスター、ライナー・キュッヒルの奥様は日本人である。そのキュッヒル真知子さんが書いた本「青い目のヴァイオリニストとの結婚」(新潮文庫)を読んだ。夏休みの宿題、読書感想文です(笑)。
 
 書店で本を手に取った時、どんな内容なのか、どういうことが書いてあるのか、などはだいたいの予想が付いた。そのうち、真知子さんの生い立ち、キュッヒルとの馴れ初め、ウィーンでの生活などについては、まあはっきり言ってしまうが、関心のまったくの対象外だった。
 それから、何と言っても真知子さんの波乱万丈の人生の要因として大きく占める姑との確執。そこまで言うかというくらいのキュッヒルの母に対する激しい憎悪と罵詈雑言は、あまりにも一方的で不快この上なかったし、自らの不倫を堂々あっけらかんと白状しながら、それもまた「姑からのひどい仕打ちからの逃避」だと正当化するあたりは、もはや呆れて物が言えず、このまま読み続けるのを止めてしまおうとさえ思った。こんな本を買うためにお金を払ったことを後悔した。
 
 つまり、だいたい6割は鼻クソみたいな内容で、実につまらなかった。マジで。
 
 だが、残りの4割は実に興味深くて、実に面白かった。
 その残りの4割とは、キュッヒルとはどういう人物なのかということと、ウィーン・フィルコンサートマスターの活動実態である。
 実際、この本を買ったのはまさにそういう面を知りたかったわけで、それをしっかり読めただけでもまあ満足しなければならないだろう。
 
 さて、その肝心の「キュッヒルとはどういう人物なのか」であるが、これが笑ってしまうくらい私の想像どおりで、要するに「人生のすべてを音楽に捧げており、音楽家としては非常に立派であるが、それ以外のこと、つまり日常の雑多なことはまっっっっっっっったく何も出来ず、役立たずである」ということだ(笑)。
 音楽がすべて。それ以外のことは何も出来ず、何も興味がなく、面倒くさがる。だから一人では何も出来ない。料理も掃除も洗濯も買い物も出来ない。服も自分で選べない。旅行するにしても、いつどこにどういう手段で行くかが自分では分からない。すべて奥さんを始めとする他人任せらしいのだ。そして、そういう面倒なことをやるくらいなら、自室に篭ってヴァイオリンを弾いていた方がいい・・・。
 
やっぱりな・・・。そうじゃないかと思ったぜ。
 
 私もこういう趣味が高じて何人かのプロの音楽家を知っているのだが、あまりにも世間知らず、常識知らずな人が多い。「そこら辺にいる音楽家でさえそうなのだから、その極めつけたるウィーン・フィルコンサートマスターが全うな常識人のわけがない」という私の読みは完全に当たった。
 
 まあ、逆に言えば、それほど身も心も音楽に捧げているからこそ、今の実力と地位を保持していると言えるかもしれない。
 
 やっぱりプロの演奏家は、遠くからその演奏だけを聴いてさえいればいい。間違っても身近な存在に置いてはならないという結論で終わり(笑)。
 
 あ、でも、音楽家の中には常識人でまともでフツーの人もきっと沢山いるだろうし、キュッヒルみたいな人がすべてじゃないということも、最後にやっぱり添えておきましょう。そうじゃないと、多方面から怒られそうだから(笑)。