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海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2015/5/6 ケルンからドレスデンへ

 夜明け前にケルンのホテルをチェックアウトした。これから飛行機でドレスデンに向かう。飛行機は、「あの」ジャーマンウィングスである。
 旅行前は、「大丈夫かなあ、落ちないかなあ」なんて冗談をほざいていたわけであるが、落とし穴は飛行機ではなく、電車にあった。
 
 ケルン中央駅で運行情報案内をしっかり確認し、予め乗る予定だったSバーンに乗車した。空港までだいたい15分位である。普段なら・・・。
 
 私はまだこの時点でも鉄道事情の異変に気がついていない。ストライキが起きていることを知らない。だって、空港に向かうSバーンが動いていたのだから。それに乗れたのだから。
 
 ここで異常が発生する。
 一駅、たった一駅区間走っただけで、次の駅で電車は停まった。車内アナウンスがドイツ語で放送される。乗客がにわかにざわつき、そしてバタバタと下車し始める。
 私には何が起こったかは分からない。分からないが、この電車がこれ以上運行しないことは明白だった。
 
 ほどなくして後続の電車がやってきた。何人かのドイツ人が車掌と話し込んでいる。不安げな表情でその推移を見守っているのは、全員が大きなキャリーバッグを持っている人。つまり、私と同様、空港を目指している人たちだ。
 事態は何も分からないが、とにかくこの人たちと一緒に行動すればいい。この人たちについていけばいい。同じ境遇の人がいるというのは、どこか安心感がある。
 
 車掌と話をしたドイツ人たちが、その後続の電車に乗り込んだ。私を含む他の連中もそれに倣って乗車する。ただし、その後続電車は空港行きの代替電車でもなんでもない。いったいどうするのだろう・・・。
 次の停車駅で、車掌と話し込んだドイツ人たちは一斉に下車した。周りの人間も、私も、黙ってそれに続く。
 ドイツ人たちが向かったのは駅前のバス停だ。どうやら空港までバスで行くということらしい。
 ところが、ああだこうだ話している人たちから漏れ聞こえてくる英語の情報によると、空港へは直行バスはなく、乗り継ぎが必要らしい。ただいまの時間は午前5時半。時刻表を覗くと、この時間帯のバスはせいぜい1時間に1、2本程度しか運行されていない。どういう乗り継ぎになるのかは不明だが、これではいったい何時に空港に到着するのか分かりゃしない!
 
 私は徐々に焦ってきた。不安に駆られてきた。でも、どうすることも出来ない。いったいこの時の私に何が出来たというのか。時間は刻一刻と過ぎる。フライトの時間は迫っていく。
 
 空港に行きたがっているおよそ20人くらいのうち、誰かが携帯電話でタクシーを呼んだ。
 
そう!これ!これなのだ!これが正解。これが解決策なのだ。おそらく唯一の。
 
タクシーがやってきた。こうなると、積極的な人間が勝つ。
「私も一緒に乗車させてもらえませんか?」
人を押し退けてでも、すかさず申し出る図々しいヤツが勝つ。
 
1台目では私は完敗。2台目のタクシーが到着した。また別の人が呼んだらしい。私はそのタクシーめがけて走り、そして叫んだ。「私も乗せて~!お願い~!」
 
勝った。
無事に空港に到着。タクシー代は割り勘。飛行機はスケジュールどおりの運行だった。
 
ドレスデンに到着。空港から市内に向かうSバーン駅を目指そうとしたら、今度は空港職員にとがめられた。
「バスで行ってください。」
「ん??なんで??」。
 
 私は「ドイツ鉄道が一斉ストライキに入っている」というニュースを得ていない。ネットで日本のYahooニュースを見たからって、そういうローカルな情報が載っているわけがない。
 だが、さすがにいい加減「これはおかしい」と気が付いた。ひょっとしてストライキかもなあ、と感づいた。振り返れば、昨日のケルン行きの電車もキャンセルだったではないか。
 
 まあ、なにはともあれ、ドレスデンに着いた。ドレスデンは今回の旅行、鑑賞演目のハイライト。とにかく、ホッとした。