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2015/4/12 東京・春・音楽祭(合唱の芸術シリーズ)

2015年4月12日  東京・春・音楽祭  合唱の芸術シリーズ   東京文化会館
指揮  大野和士
合唱  東京オペラシンガーズ(合唱指揮:レナート・バルサドンナ)
ロバート・ディーン・スミス(テノール
ベルリオーズ  「レクイエム」死者のための大ミサ曲
 
 
 合唱やブラスのバンダなどを伴った特大編成の作品を鑑賞するのは、いつだってワクワクする。特にベル・レク(ヴェル・レクと紛らわしいね)の場合、ステージ上にティンパニが何台も(10台くらいあった?)連なって並ぶ様は壮観の一言で、「あれが鳴り響いたら、ものすごい音響なんだろうなあ」と始まる前からドキドキしてしまう。
 
 実際、第二曲「怒りの日(Dies irae)」はスペクタクルで、耳を奪われる。ここの部分の演奏を楽しみにしている人は多いだろうし、全曲中のハイライトであることは間違いないだろう。
 
 だが、そうしたスペクタクル性だけでこの作品の魅力を語ることはできない。派手な曲のようでいて、実は祈りを捧げる静謐な音楽が大半を占め、それこそが素晴らしい。そのひそやかな美しさをしっかりと伝えてくれるかどうかが、指揮者に求められるポイントだと私は思う。
 
 その意味において、大野さんの音楽作りは的を射ていた。派手な場面だからといって音を緊張させず、静かな場面だからといって弛緩させず、どちらも同じ力の入れようで手のひらに包み、そして開放させる。そうすることで全曲において大きな流れを生み出していた。
 
 正直言うと、バンダの金管が渦巻くように鳴り響く場面では、片側の席(4階R席)であったためバランスが悪く、反対側と微妙なズレを感じてなんとも居心地が悪かった。そこら辺は痛し痒しであった。
 
 合唱の東京オペラシンガーズ。私はこの合唱団の実力を常日頃から高く評価しているが、今回はその合唱指揮としてロイヤル・オペラ・ハウスからバルサドンナ氏を招いていたのには驚いた。
 少し前までなら、そうした人物を招聘したところで「ふーん」で終わっていただろう。世界有数の歌劇場とはいえ、そこの合唱指揮者がどれほど有能なのか、その名前も含めてまったく知らなかったからだ。
 
 だが、私は昨年10月、現地ロンドンで氏が指揮したオペラを鑑賞した。音楽監督パッパーノの代役だった。本来裏方の役職のはずだが、音楽監督不在の際には本番を任されるほどの重要な音楽家であることをそこで初めて知ったのである。
 
 そうなると、氏を招聘した今回の公演は私にとっては特別な意味が付与される。俄然と箔が付く。「あのときのバルサドンナではないですか!」というわけだ。
 
 だからというわけではないが、合唱はいつもより更に一段と素晴らしかった・・・ような気がした(笑)。気のせいかもしれないが、そう思ったのならそれでよかろう。思い込みと自己満足は重要なのである。