2015年1月20日 アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル 東京オペラシティホール
リスト メフィスト・ワルツ第1番、コンソレーション第3番、タランテラ
リスト ラコッツィ行進曲(ホロヴィッツ編)
サン・サーンス 死の舞踏(リスト・ホロヴィッツ編)
このピアニストは危険だ。猛烈な威力で、近づくとたちまち吹き飛ばされてしまう。あるいは巨大な渦で、みるみるうちに飲み込まれてしまう。
それにしてもとてつもないテクニックだ。信じられないヴィルトゥオーゾだ。
もし私が実力的にフツーのピアニストで、このような演奏を間近で聴かされたら、「もう、やってられねえよ」と自暴自棄になっちゃうね。ピアニスト辞めちゃうね。だって、フツーのピアニストが手に入れたくて必死に努力しても、どうしても手に入らない「特別な才能」というのがあって、それをガヴリリュクは持っているのだからね。
彼の良い点は、そうしたテクニックのひけらかしに終始していないことだ。超絶的な腕前をしっかり音楽に活かそうとしている。
何かのインタビュー記事で、たしか「技術的に難しいと感じさせないような演奏を目指している」みたいなことを語っているのを見つけたことがある。言いたいことは「自分はどんな難曲も演奏できる」ではなく、「重要なのは技術ではなく、音楽である」なのだろう。
ただそうは言っても、これだけ圧倒的だと技術が目立ってしまうのは仕方がない。だって完璧なのだから。聴く側からすれば、器楽演奏にはそうした楽しみ方もある。
プログラムにその名前が入っていたのでふと思ったが、ひょっとすると若かりし頃のホロヴィッツってこんな感じだったのではないだろうか・・・。
おっとっと、いくらなんでも伝説のピアニストを引き合いに出すのはあまりにも持ち上げすぎかもしれないね。