クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

スカラ座の座席と価格

 ミラノ・スカラ座のチケットの価格は、席の場所によるカテゴリーだけでなく、公演によっても差が付けられている。バレエとオペラとで値段が異なるのはある意味当然として、同じオペラであっても、プレミエなのか再演なのか、注目公演なのかそうでもないのか、特別な指揮者や歌手が登場するのか、などによって分類され、価格に差を設けている。
 もっとも、これは何もスカラ座に限った事ではなく、多くの歌劇場で見られるシステムなのであるが。
 
 その最たるものが12月7日の公演であることは、オペラファンなら誰もが知るところ。スカラ座にとって特別な日。
 この日はミラノの守護聖人アンブロージョの日という祝日で、スカラ座の新シーズン開幕を告げるのは毎年この日と決まっている。各界の著名人や政治家、金持ち、セレブらが盛装して劇場に集まり、ここぞとばかりにステータスを競い合う。おそらくロビーや客席には、男性の整髪剤と女性の香水のドキツイ匂いがプンプンに漂っていることであろう。うえっ。
 
この開幕公演のチケット価格が超ハンパない。
一番高いカテゴリー、いわゆるS席いくらだと思います?
2000ユーロ。約30万円。ドッひぇ~~!!
A席が1400ユーロで約20万円。真ん中のカテゴリーでも10万円くらいする。完全に高嶺の花。普通のオペラファンは決して近寄るべからず。近寄りたくても近寄れないわな。
 
 7日は完全に別格としても、今回のフィデリオはシーズン演目の中でも最上ランクになっていた。シーズン開幕、新演出、指揮者、歌手等を勘案すると、「まあ、そうなんだろうなあ」と思う。
 
 私が購入したのはカテゴリー2。いわゆるA席だったが、定価に諸手数料が加算され、234ユーロ約3万5千円だった。ちょっと高い。円安ということもあってなおさらそう感じる。
 本当はもっと安いチケットにしたいのだが、馬蹄形の歌劇場はカテゴリーと良席の兼ね合いを見計らうのが本当に難しい。
 
 これが例えばウィーン国立歌劇場バイエルン州立歌劇場あたりだと、同じ平土間席の中でも3つくらいのカテゴリーが設定されているし、カテゴリー3くらいまでなら十分に満足出来る範囲だ。
 ところがスカラ座の場合、プラテアと呼ばれる平土間はオールS席の単一カテゴリー、パルコと呼ばれるボックス席の一列目もほぼ全部S席。
 つまり、舞台をしっかり臨める席は全部S席で占められているのである。A席以下を選ぼうとすると、「果たしてこの席は視界が良いのか」という問題に直面する。値段をケチってカテゴリーを下げればステージが良く見えず、その結果、ストレスを抱えながらの観賞となる危険が大だ。面倒だなあ。
 
 今回私は2階のちょうど真横(舞台から向かって右側)のボックス席の二列目だった。ボックス内には5つの座席がある。ご説明しようと思う。
 
        ③  ⑤
      ①
        ④
      ②
 
 舞台
 
 上の配列でいうと、ボックス内で①と②が一列目、③と④が二列目、⑤が三列目となる。舞台の方向と位置関係はお分かりであろうか。
 
 さて、同じボックス内の5つの席。このたった5つの席においても、席種による明確な序列が存在している。
 ①と②は同じ一列目だが、座席の置き方と舞台への向き方で微妙に差が生じている。ボックスの中で視覚的にも音的にもベストなポジションは①だ。しかし①と②はどちらも同じカテゴリー1(S席)となっている。300ユーロ約4万5千円。(高っ!)
 
 今回の私の席は③。ここがカテゴリー2。①との距離はわずか数十センチ。これで約1万円の差が発生する。なんとまあ・・。
 ただし①の頭越しに舞台を眺める感じで、仮に①の頭をうまくかわせても、②が視界に入ってきて邪魔になることがある。ありがたいことに一列目よりもイスが少し高くなっているのだが、それでも舞台の視界確保率は85%ってところだろうか。まあ、かろうじて許容の範囲内である。平土間だって、前の席がデカい人だったりすると、とたんに視界不良となるので、そこらへんはどっこいどっこい。
 
 一列目と同様二列目の③と④も同一カテゴリーかと思いきや、さにあらず。ランクが異なっている。④はカテゴリー3だ。つまり、舞台への視界に更に差が生じるということ。おそらく視界確保率は50%くらいにまで低下する。ボックスなので仕切りの壁に視界を遮られるのだ。
 もし覗き込もうとして前のめりになろうものなら、③つまり俺様の邪魔になる。それは絶対に許さん(笑)。
 まったく見えないというわけではないが、結構イライラすると思うんだよなあ。
 
 三列目の⑤。普通に着席していたら、おそらく舞台はまったく見えないと思う。視界確保率20%未満。音も届いてこないし、出来ることなら絶対に避けたい席だ。これで千円くらいだというのなら我慢出来るかもしれないが、ここでもカテゴリー4でおよそ2万円もするのである。ひでえ。
 
 
 ということで、これからスカラ座を訪れようとする方々への、私なりのアドバイス
 もし、オペラ鑑賞のためにスカラ座に行くことになった場合、それが自分にとっての最大級のご褒美で、滅多にないチャンスだというのであれば、ケチらず、思い切ってS席で鑑賞してみてはいかがか。特大スペシャルな体験だと思って、奮発してしまおう。好みにもよるが、私は平土間よりも上階のボックス席の一列目の方が音が良いと思う。
 
とにかく、中途半端は良くない。
 
 もちろん、安くて、視界も良くて、なおかつ音も良い場所というのは、存在する。ガレリアと呼ばれるボックス席のもう一つ上のエリアの一列目はおそらく最高だ。
 だが、そういう席はアボナメント(シーズン会員)で早くから埋まってしまうし、常連で慣れていないと難しい。
 (庶民エリアであるガレリアは、以前私がそこに行った時、上流階級エリアのパルコやプラテアとは入場口も違い、豪華なロビー「トスカニーニの間」にも出入り出来なかった。明らかに差別しているわけだが、今もそうなのだろうか・・・。)
 
とにかく私自身は、高いお金を払えば、それだけの見返りがあるのだと自分に言い聞かせている。
 
せっかくスカラ座に来たのだから。なんだかんだ言ってもスカラ座は特別なのだから。