クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/12/12 フィレンツェへの道

 出発の前日、私は世界各国の現地情報を教えてくれるサイトを見て今回のイタリアのスト(ショーペロ)の事を知った。旅行直前に思い切り冷水を浴びせられた格好だ。暗澹たる気分になった。
 
 過去にもショーペロに遭遇したことがある。一度やそこらではない。このいいかげんなラテン国に何度も足を運べば、誰でもいつかは遭遇する。そして痛い目に遭う。ショーペロはヤツらにとっては日常のこと。だから、避けて通ることは出来ないのだ。
 
 経験上知っていること、それはショーペロにも種類というか、度合いがあるということだ。
 つまり、ほぼ完全に行われるのか、それとも一部にて行われるのか、ということ。
 例えば交通機関で言うと、ほとんどの運行が全面ストップする場合と、間引き運行される場合とがある。そこらへんの事情と見分けは、遥か遠く離れた国に住んでいる人間には判る由もない。
 
 とにかくこうなってしまった以上、行ってみて現地で状況を探るしかない。そして限定的な一部実施であることをひたすら願うしかない。
 
 
 羽田から深夜便で出発し、現地時間の午前5時半に経由地であるフランクフルトに到着した。乗り換えのため、すぐに運行スケジュールが示されている案内板をチェックした。
 
そこで私は、唖然とするほどの恐ろしい事実を目にする。
イタリア行きのフライトがほぼすべてキャンセルとなっているではないか!
 
 なんという幸運であろうか、私が乗る午前7時20分発のローマ行きは変更なくオン・スケジュール。しかし、午前8時以降に出発するイタリア方面のすべてのフライト、ミラノ行き、ベネチア行き、ローマ行き、ナポリ行きなどが全部キャンセルになっていた・・・。
 
ルフトハンザの地上職員に日本人がいたので、尋ねてみた。そこでようやく全体の概要が掴めた。
 
 イタリアにおける航空関連のストライキは、12月12日現地時間の午前10時から午後6時までという時間限定。その間の発着はアメリカやアジアなどの遠距離便を除きほとんどキャンセル。つまり、午前10時よりも前にローマに到着する私の便は間一髪セーフだったというわけだ。
 ストライキはイタリア全土に及んでいるため、代替で別都市に向かうことさえ不可能。このため、不幸にもキャンセルとなった方々は、夜の便か、もしくは最悪翌日まで足止めを食らうという、なんとも恐ろしい事態であった。
 
午前7時台の飛行機かどうかが、天国と地獄の分かれ道。私はたまたま地獄に落とされずに済んだのだ!マンマ・ミーア・・。
 
だからといって、ここで喜ぶのはまったくの早計。
ローマに行ったはいい。で?その後はどうするの?
これが大問題だ。
 
 私の最終目的地はフィレンツェ
 最初からフィレンツェに行くつもりならフランクフルト-フィレンツェ便を迷わず選択する。
 だが、もともとはローマ歌劇場アイーダを観るつもりだったという事情により、いったんローマ入りし、その後に電車でフィレンツェに向かうことにしていた。ストライキは飛行機だけではない。状況はイタリア国鉄も一緒。ローマに行っても、その後にフィレンツェに行くことが出来なかったら、結局は何の意味もないのである。
 
 実は、フランクフルトからイタリアに向かう午前7時台のフライトが私のローマ便の他にもう一つだけあった。それがフィレンツェ便であった。もしこれに乗り換えられたら、問題はすべて解決する!
私はダメ元で交渉した。フィレンツェ便に替えてもらえないか、と。
 
ダメ元だったが、やっぱりダメでした(笑)。
そりゃそうだよな。私の飛行機は予定どおり飛ぶのに、ストを理由に変更してくれるわけがない。当たり前だよな。
 
 こうなりゃとにかくローマに行くしかない。行って、その後フィレンツェに行けるかどうかを現地で確認する。もし鉄道が完全ストップだったら・・・その時はもう腹を括るしかない。すべてを諦めるのだ。
 
 午前9時15分、ローマ・フィウミチーノ空港到着。
 空港とローマ中心部のテルミニ駅を結ぶシャトル電車は動いていた。次のテルミニ行きは9時38分であった。
 
 9時25分、切符を買っていたちょうどその時、ホームにテルミニ行きの電車が到着した。すると、人々がこの電車に乗り込むために、なだれ込むかのように殺到した。
 異様な光景だった。まさかスケジュールが変更になり、この電車に乗らないと以降の電車が来ないという事態にでもなったのだろうか?それゆえみんな血相を変えて殺到しているのだろうか?
 もしそうだとしたら、私も呑気ではいられない。他の人たちと同様に私も走り、慌てて電車に飛び乗った。
 
電車が発車したのは、結局当初の予定どおりの9時38分だった・・・。
 
 みんなパニックになっているのだ。そして、一人が先走った行動をすると、みんな「我も我も」と慌てて付いていく。群集心理というのは怖い。それもこれもすべてショーペロのせいだ。恐ろしい・・・。
 
10時10分。テルミニ駅到着。
 
電車は・・・どうやら動いている。いちおう。
運行案内の電光掲示板を見る。めっちゃくちゃ乱れている・・・。
いくつかの列車がキャンセルとなり、それ以外ほぼすべての電車で遅延が発生していた。15分、20分、30分・・1時間遅れなんてのもあった。これもまたショーペロのせいだ。
 
 私は事前にネットで特急電車の切符を購入していた(イタリア特急は全席指定)。早めにネット購入すると割引で安く買えるからだ。飛行機の遅延の可能性も想定し、余裕を持ってお昼頃の電車を指定していた。
 
 今、目の前で10時20分発ミラノ行きの特急電車(フィレンツェに停車する)が10分遅れで出発しようとしていた。
決めた。
この電車に乗ってしまおう。躊躇は一切なし。
切符の二重購入になるが、構うものか。割引運賃ではないが、構うものか。既に買った切符は無駄になって捨てることになるが、構うものか。
だって、自分が予約した電車がちゃんと運行するか、何の保証もないのだから。
 
こうして、正午、フィレンツェに無事到着した。ホッとし、その後ドーっと疲れが出た。