映画館でこのオペラを観た。見終わって、改めて思った。
名曲だ。実にいい曲だ。登場人物の切ない恋愛感情と苦悩がしみじみと伝わってくる大変美しい音楽である。
しかしなあ・・・。
物語がどうもいかん。
なんつうかさあ、身も蓋もないっつうかさあ。
現代人の男の感性からすると「アホくさ」って感じなのである。
だってさあ。要するに、あれだ、「婚約している人に恋をし、フラれて、絶望して、自殺・・・」なわけである。なんだかなあ・・・。
これがドイツの文豪ゲーテの作品だというのだから、ますますたちが悪い。作品「若きウェルテルの悩み」が発表されると、ヨーロッパ中で瞬く間に大ヒットベストセラーになったそうだ。マジか。
あるいは、この作品はひょっとすると「トリスタンとイゾルデ」に相通じるものがあるのかも。
現世では叶わぬ恋。成就するためにはもう死しかない、と。
まあいずれにしても、私なんかはマスネの音楽のおかげで作品を受け入れることが出来たわけだ。
音楽というのは偉大である。つまらん物語(あ、スマン!)を変容させ、昇華させる威力がある。
今回この記事を書くにあたり、ウィキでちょっと調べてみたのであるが、物語に影響されて自殺志願が出てしまう現象として「ウェルテル効果」という言葉が存在すること、それからお菓子メーカー「ロッテ」の名前の由来がシャル‘ロッテ’であること、など、驚きの事実を知った。へえー。
最後に、METで歌ったウェルテル役のカウフマンは実に見事だった。生観賞ではないので断言は出来ないが、ワーグナーよりもイタリア物よりも、この役が一番合っているような気がする。個人的な感想ですが。