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2014/3/29 マルリス・ペーターゼン リサイタル(東京・春・音楽祭)

2014年3月29日  東京・春・音楽祭 歌曲シリーズ   東京文化会館小ホール
マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)、イェンドリック・シュプリンガー(ピアノ)
R・シュトラウス  献呈、おとめの花、オフィーリアの歌、ツェツィーリエ
シューマン  女の愛と生涯
リーム  赤
 
 
 オペラなどの公演で、ノーマークだった無名歌手(と言っても、私が知らなかっただけだが)の想像を超えた素晴らしい歌唱に接し、しばしば衝撃を受けることがある。実はペーターゼンがそうだった。
 2005年5月、ハンブルク歌劇場で上演されたベルクの「ルル」で、超難役であるタイトルロールに抜擢された彼女を聴いたのだが、あまりの凄さに圧倒されたことを今でもはっきり覚えている。
 
 このハンブルクの「ルル」はご存知P・コンヴィチュニーの演出によるもので、男側の一方的な趣味や好みに応えた、欲望の対象の女という役設定だった。演出的に、多面的で相当に高度な演技を求められたことは想像に難くないにもかかわらず、その役を完全にモノにしていて見事だった。もちろん音楽的にも申し分がなかった。
 
 以来、彼女の名は私の脳裏にずっと刻まれ続けていたのだが、残念なことに再度聴く機会が得られなかった。今回の公演は、そういう意味で待望だった。
 
 この日の公演でも前回に聴いた時と同様に鮮烈な印象をもたらしたのは、その豊かな感情表現である。歌詞に込められた思いが切々と伝わってくるのだ。
 選曲されたプログラムの根底には「女性」というテーマが敷かれている。男性の視点からの女性と、女性の視点からの女性の両方だ。ペーターゼンは、それぞれの意味をしっかりと汲み取りながら、それを巧みに音楽表現に織り交ぜていた。
 歌を聴いただけでも十分に楽しめたが、もし歌詞を同時に理解することが出来たら、あるいは字幕などでカバーしてもらえたら、きっともっと味わい深く心に染みたことだろう。
 
 アンコールで桜をモチーフにした即興の歌を披露したのには驚いた。日本人の心と言っても過言ではない桜の花から、彼女が音楽的なインスピレーションを得たというのであれば、こんなに素晴らしいことはない。たった1日のリサイタルだけのためにわざわざ来日してくれたのだが、タイミングとして一年で一番美しい時期に来ていただけたことを個人的にとても嬉しく思う。
 次回の来日はオペラで是非!