たった三日間だけの滞在だったが、そのうち1日は郊外に出かけようと最初から決めていた。ウィンザーにするかハンプトン・コートにするか迷ったが、ハンプトンはロンドン市内交通網のゾーン内だということで、そちらに決定。起点となるウォーター・ルー駅までホテルから徒歩約15分、そこから郊外電車に乗って約35分。半日程度の小旅行として、ちょうどお手軽な距離である。
ヘンリー8世と言えば、イングランド王家の中でも数々の逸話を残したことで有名だ。カリスマがあり、多才であり、男らしく豪腕で、そして何よりも好色。次々と結婚と離婚を繰り返し、そのために妻を不実のかどで処刑送りにしたことでも知られる。
アンナ・ボレーナは英語でアン・ブーリン。ヘンリーの寵愛を受けて女王になり、後のエリザベス女王を産んだが、ヘンリーは愛想を尽かしてアンの侍女であるジェーン・シーモア(イタリア語でジョヴァンナ・セイモウ)に心を移し、やがてアンは処刑されてしまう。そうしたオペラのストーリーを理解した上でこのハンプトン・コート・パレスを訪れると、楽しさも倍増すること間違いなし。
広大な宮殿を効率よく見学することが出来るように、それぞれコースが設定されていて、それを一つ一つ回っていく形になる。日本語にも対応した音声ガイドも無料で貸してくれる。
基本的には自由見学方式なのだが、中世の衣装に身を包んだ案内人が演技や寸劇を交えながら当時のエピソードを紹介するツアーが一日のうち何回か決められた時間に催行されて、これに参加すると一層楽しめる。
我々も一通り自由見学で回った後、たまたまパンフレットを見たら、程なくしてそれが行われるということを知って、そのツアーを待ってみた。
すると、やってきましたよ、コスチュームに身をまとった役者さんが。
はっきり言って、何を言っているのか聞き取れないので、全然何をやっているのか分からない。分からないけど、見ていて楽しい。案外アンナ・ボレーナの物語でもやっていたのかもしれないね(笑)。
最後にKくんが植木の垣根で作られた迷路に是非挑戦しようと、言い出した。昔、日本でも流行った時期があったなあ。今でも遊園地にはあるのかしら。
正直言って、私自身は全然気が進まなかった。
理由は簡単。疲れるからだ。なかなか出られないとイライラするし。
「えー、勘弁してよ~」という私の懇願を、Kくんは無下なく却下。やれやれ、トホホ。
迷路入場の際、看板に有料との表示があったのでこれ幸いとばかり「金払うほどのものじゃないでしょう?」と説得したのだが、看板をよーく読み直してみると「宮殿のチケット購入者は無料」という但し書きがあって、私はガックリ、Kくんは高笑い。仕方なく、私もチャレンジしました。
いくつかの分岐点で道を誤り、行き止まりにぶつかってムカついたが、まあそれほど迷うことなく、それほど時間もかからずに無事抜けられたのは幸いでした。
午前いっぱいをハンプトン・コートで過ごし、午後1時前にロンドン市内に戻った。ロイヤルオペラハウスのすぐ裏にあったインド料理店でランチを取り、午後6時からのオペラに備えて早めにホテルに戻って仮眠した。