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2014/3/19 オペラ座の怪人

2014年3月19日  ハー・マジェスティ劇場
A・ロイド・ウェバー   オペラ座の怪人
 
1986年、ロンドンの劇場界隈ウェストエンドで一つのミュージカルが生まれた。以来27年、メガヒットのロングランが続き、ミュージカル史上に残る不滅の地位を確立。定休日を除く毎日毎晩、同じ劇場、同じ音楽、同じ演出で上演され続けている。恐らくこれからもずっと上演は続いていくことだろう。天才モーツァルトの音楽だって、不朽の名作オペラと言われるカルメンや椿姫だって、これほどのヒットになることはない。もはや奇跡としか言いようがない空前絶後のバケモノミュージカル、それが「オペラ座の怪人」だ。
 
なぜこれほどまでに世界中で愛され、人々の心を掴むのか。
上演を観ればすぐに判る。
豪華な衣装、スペクタクルな装置、美しい音楽、親しみやすいメロディ、ちょっぴりミステリアスでちょっぴり悲しい物語・・・。舞台を構成するその全てがビューティフル。これほど完璧に三拍子、四拍子揃った舞台作品は、あと一つの作品を除いて見当たらないだろう。(あと一つが何であるかは言わずもがな)
 
 作曲家ロイド・ウェバーは、あるインタビューでこう軽口を叩いていた。
「三角関係だからね。分かりやすく、共感を得られやすいんだよね。あっはっは。」
 
もちろんジョークであろう。
この物語はただの三角関係ではない。主人公が容姿の醜さというコンプレックスを抱えている、ここがミソだ。人は大なり小なりコンプレックスがあり、悩みがある。それゆえ主人公のファントムに対して、ある種の共感と同情心が芽生える。ましてやファントムの場合、忌み嫌われるほどの冷遇を受け、社会に対する絶望と恨みで人格が歪んでしまっている。そうしたコンプレックスと人格的な歪みを、愛の力で克服させるという壮大なメロドラマになっている点が、この作品の素晴らしいところだ。
 
 ポップス音楽が採り入れられているミュージカルは、許容範囲の狭いクラシックファンにとってはひょっとすると受け入れがたい部分があるかもしれない。何を隠そう、この私もその昔は眼中になかった。「ミュージカルだぁ?? あんなのは単なるショーでしょ。」みたいな。(ひでえもんだ)
 
 そんな食わず嫌いの私に、クラシック音楽もミュージカルも両方とも好きだという友人くんが一枚組のCDを貸してくれた。それがこの「オペラ座の怪人」だった。ご存知マイケル・クロフォードとサラ・ブライトマンが共演したオリジナルロンドンキャスト版だ。もちろん、一瞬にして魅了されてしまったのは言うまでもない。
 
 全編にわたって音楽が物語の進行をリードする形はまさにオペラそのものだし、そもそもパリ・オペラ座が舞台になっていて歌劇場の舞台裏にも迫るので、クラシックファンにも十分に親近感が湧いてくるのは間違いなし。もしミュージカルに一種の偏見を持っている方がいたら、是非騙されたと思って聴いていただきたいと思う。コテコテのクラシックファンである私が推薦するのだから、間違いないってば!
 
 ファントムの上演を観るのは今回で5度目。しかしながら前回に見たのは随分と前で、およそ10年ぶり。でも、逆にこれくらい久しぶりの方が、懐かしさも含めてかえって感動が増幅されたような気がする。
 もしそうなら、また10年くらい経ったらロンドンに来て観ることにしましょかねー。大丈夫、公演は間違いなく続いているから。Kくん、その時はまた行くかい?
(私と行くと『金がかかるんだよねー』などとぬかしやがるKくんである。感動したくせに(笑))