クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2014/3/19 ロンドン1

 飛行機、それからオペラとミュージカルのチケットは私が手配した。その代わり、Kくんにはホテル選びを任せた。
 
 ロンドンにはアールズコートやパディントン、ヴィクトリアなどの駅界隈にエコノミーホテル街がある。割高なホテルが多いロンドン、少しでも節約したいのであれば、そこら辺から探すのがベター。私はそうしているし、てっきりKくんも同じような近辺で見つけてくるのかと思った。
 そうしたら、なんと、彼はロンドンのど真ん中という絶好のロケーションのホテルを見つけてきやがった。トラファルガー広場から徒歩5分、コヴェントガーデンから徒歩3分(!)。空港に直行するピカデリーライン付近。ちゃんとしたイングリッシュ・ブレックファースト付き。それでいて価格は我々が決めた予算の範囲内。
 価格比較も含めあらゆるウェブサイトで徹底的にリサーチし、最終的にすべての劇場まで徒歩圏のホテルにターゲットを絞って決めたのだとか。
 
 驚いた。私なら「ど真ん中は当然高い」という固定概念により、最初から対象外とするところだ。人と旅行すると、自分一人ではとても思い及ばない知恵と発想が展開される場合があるが、まさにそういうことだった。
 
 実は、自分一人ではとても思い及ばない知恵にびっくりしたことがもう一つ。
 宿泊料金に朝食代が含まれているにも関わらず早朝出発のために朝食を取ることが出来ない時、皆さんはどうします?
 私は諦めていた。これまでずっと。仕方がないものだと思っていた。そういうものじゃないの?違うの?
 
 帰国の日、フライトの関係で早朝にチェックアウトすることが予め分かっていたのだが、ホテルにチェックインした際にKくんはおもむろに受付係に尋ねた。
「最終日は朝食が取れないので、テイクアウトのランチボックスを作ってくれませんか?」
 
 こんなお願いをすること自体がまったく私の想定を越えていたのだが、受付係の「Yes!」という返事に再度驚いた。そんなことが出来たのか??
 なんだいなんだい、だったらもっと早く教えてくれよ。20年前から知りたかったぜ。頼むよ。
 
 ちなみに紙袋に入れて用意してくれた朝食セットはミニクロワッサン、ミニデニッシュ、ヨーグルト、オレンジジュース、そして小さなリンゴ丸かじり用(笑)。
 いや、リンゴをもらってもなあ・・。公衆の中でリンゴをかぶりつくのはナシでしょう。
 と思いきや、地下鉄の車内で「ガブッ、ムシャムシャ」とやっている若い女性を今回の旅行中に見かけた。ロンドンっ子の流儀なのだろうか?
 
 
さて、観光の話に移ろう。
午前9時45分にホテルに到着し、さっそく荷物を預けて街に繰り出した。
 
 トラファルガー広場を抜け、ウェストミンスター寺院に向かう途中に、バンケティング・ハウスという建物がある。ルーベンスが描いた天井画で有名な宮殿だ。地球の歩き方によると、清教徒革命で国王チャールズ1世がクロムウェルに処刑された場所でもあるという。
 
 ここを訪れたのはもう遥か15年以上も前。記憶がかなり薄れているが、たしか豪華な宮殿だった・・・ような気がした。
 久しぶりなので、もう一度見学してみたい衝動に駆られた。さっそくKくんに「入ってみようよ!」と提案。入場料は6.6ポンド。円安ポンド高のせいで円換算すると千円以上もする。
 Kくんが聞いてくる。「6.6ポンドの価値があるんでしょうねえ?」
 ええ、もちろんありますとも。ルーベンスだよ?清教徒革命の名跡だよ?あるに決まってるじゃんか。以前に見学した際に、良かったようなイメージが残っているんだよ。なんとなくだがな。
 
 入ってみた。大きな広間。天井はルーベンス。それだけ。「あれ?こんなんだったっけ??」
 
 こういう時、Kくんはまったく容赦がない。
「なんですかこれは? これで千円ですか? ふざけてませんか? ちょっとちょっと。大丈夫?」
 
「ロンドンは何度も来ているから、大丈夫、任せとけって」と胸を張った私への信用は初っ端からいとも簡単に崩れてしまった。くっそー。
イメージ 1
 
 
 続いて訪れたのは、チャーチルウォールーム第二次世界大戦の最中、当時の首相チャーチル及び軍幹部が実際に情報収集し、戦略を企て、指揮した総合司令室が公開されている。
 上で「自分一人ではとても思い及ばないこと」と書いたが、ここもそう。Kくんが「行ってみよう」と言わなければ、まず足を運ぶことはなかった。地球の歩き方にも記事が載っていないのだから。学生の頃から世界史に大きな関心を持っているKくんらしい発案である。
 
 博物館として展示されている司令室は地下にある。つまり、空爆を逃れるための防空壕の中というわけだ。迷路のように入り組んでいて、当時の様子を伝える部屋や置物などが生々しい。戦略用の世界地図も壁に貼ってあって、その中には日本地図も。ターゲットになっていたというわけか。
 
 見学者は子供の団体さんが多かった。授業の一環、社会科見学に違いない。歴史や戦争に興味のある人にとっても、これらはたまらない展示だろう。そういうことにあまり関心のない私も、結構興味深く見入った。(下の写真の人物は、ろう人形)
イメージ 2
 
 
 
 次の観光ポイントであるウェストミンスター寺院に移動する途中、とある建物の前で偶然目に留まった看板。「The supreme Court」と書いてある。訳すと「最高裁判所」。しかも「For Free」。自由見学(無料)らしい。
イメージ 3
 
 たまたま通りすがっただけだが、無料ということで途端に好奇心が湧き出した。ちょっと覗いてみようではないか。普通ならとても敷居が高くて、簡単に見学することなど出来ないだろうから。
 
 中に入ると、空港にあるようなX線手荷物検査器が。まあ、それくらいして当然でしょうなあ。
 階段を上がると、大きな部屋の入口に警備員らしき担当者が立っている。どうやら部屋の中で本物の裁判が行われているようなのだ。
 普通なら関係者もしくは傍聴申請者以外は入室禁止、ましてや誰がどう見てもひやかし観光客なんて、つまみ出されてもいいくらいだろう。
 ところが警備員は我々にこう告げた。
「中は撮影禁止、携帯の通話禁止ですけど、入室しますか?」
 
「え?? ええ・・まあ・・。その・・ちょっとだけ・・でもいいですか?」
こうして一番後ろの傍聴席に気まずそうにチョコンと座った日本人二人。目の前で検事だか弁護士だかが朗々と発言しているが、内容はチンプンカンプン。イギリス人の英語がまったく聞き取れない。ただ、ぼーっと様子を眺めながら、なんとなく「今、ものすごーく貴重な体験をしているんだなあ」と実感。
 
 まさかイギリスで本物の裁判を傍聴するとは! これは日本に帰ってから自慢できるかもねー。
「オレさ、ロンドンの最高裁判所で裁判を見てきたぜ。どうだいスゲーだろ。へっへー。」
「すごーい! で、何の裁判だったの?」
「さあ・・・。」
「どんなことを争っていたの?」
「さあ・・・。」
 
まま、固いことは言いなさんな。
 
 この後、ウェストミンスター寺院を見学。昼食を取った後にナショナル・ギャラリーを見学。午後3時半に観光を終了して、ホテルに戻った。
 
イメージ 4