クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2013/12/31 こうもり

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2013年12月31日  ケルン歌劇場     オーパー・アム・ドム
J・シュトラウス   喜歌劇こうもり(コンサート形式上演)
指揮  ゲルリット・プリースニッツ
管弦楽  ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
ボー・スコウフス(アイゼンシュタイン)、シモーネ・ケルメス(ロザリンデ)、ウルリッヒ・ヒールッシャー(フランク)、ヴェッサリーナ・カサロヴァ(オルロフスキー)、ミルコ・ロシュコウスキー(アルフレッド)、ミルジェンコ・トゥルク(ファルケ)   他
 
 
 会場のオーパー・アム・ドムは、写真のとおり、およそ歌劇場に似つかわしくない建物。
 それもそのはず、本当の名称は「ミュージカル・ドーム」。既存の劇場が現在改修中のため、ミュージカルやポップスコンサートを行うための劇場を借りながら、その間のシーズンを乗り切っているというわけである。
 
 もちろん、そうした会場を使用することによるマイナスの影響は避けられない。
 偶然にも同じ日に鑑賞したkametaro07さんも御自身のブログで述べられていたが、特設会場なので床がギシギシと軋むし、音響は良くないし、外からの音が中に漏れてくる。折しもこの日は大晦日で、外では新年を祝うために若者らが花火や爆竹をけたたましく鳴らしているが、そうした音が入ってきてしまうのは、やはり困りものだ。
 まあでも、こればかりは仕方がない。改修が終了するまでの間は我慢するしかない。
 
「演目はオペレッタだし、会場も元々ミュージカル劇場だし、かなりカジュアルムードなのかな?」と勝手に想像し、気軽な気持ち(一応ネクタイは締めてたけど)で会場入りすると、そこは完全に社交の場。エレガントな服で身を包み、シャンパングラスを片手に談笑する紳士淑女・・っていうかジジババ(笑)で、狭いロビーが埋まっていた。
 なるほどー。ドイツ人にとって12月31日は年に何回かある特別な日の一つなのかもしれない。「大晦日に劇場に行く」というのは、一種のステータスであり、晴れの場であり、優雅な過ごし方ということなのだろう。特に銘打ってはいなかったが、要するにこの公演は「ガラ」なのであった。
 
 コンサート形式上演ということになっていたが、歌手たちは自由に演技をし、動き回って役を演じていたので、必然的に「音楽を聴く」というより「劇を鑑賞する」といった趣きになり、それはそれでとても良かった。やっぱりこうもりを堅苦しくコンサート風にやってもしょうがないよね。
 
 特に合唱団は、通常のコンサートのようにソプラノ・アルト・テノール・バスごとにひな壇に整列するのではなく、それぞれ衣装をまとい、舞踏会に三々五々集まったゲストのごとく散らばり、カップルを組み、時に談笑したりしつつ歌っていて、それが雰囲気作りに大きく貢献していた。いわば彼らが舞台装置の役目をも担っていたと思う。
 
 指揮者については、私はまったく知らなかったが、調べてみたら、どうやらウィーン・フォルクス・オーパーを拠点に活動している様子。であれば、まさにこの公演には打ってつけということか。タクトや音楽うんぬんについては、評論するつもりもなし。お客さんは上演を心から愉しんでいた。それでよし。
 
 本公演にカサロヴァとスコウフスというネームバリューのあるご両人が出演していたのは、いかにも華を添えた感じだ。
 スコウフスは、いつもながら上手い。芝居も歌も。彼の場合、歌と演技によって、表面的な部分だけでなくキャラクターの性格や内面さえも表現することが出来るのが最大の強みである。
 カサロヴァは、もちろん悪くはなかったのだが、一癖も二癖もあるオルロフスキー役としてはちょっとアクが弱い印象。もっとも聴き手であるこちらの問題で、映像や実演などで強烈なインパクトを残しているファスベンダー、バルツァ、コワルスキーなどによる怪演のイメージが強すぎるのかもしれない。
 
 実のところ、この二人のビッグネームよりも良い印象を持ったのはロザリンデ役のケルメス。彼女の歌は初めて聴いた。名前だけは知っていたが、どちらかと言うとバロック系だと思っていたので、この役は結構意外。でも、歌も演技もかなり弾けていて、最高だった。
 
 お客さんは、作品に散りばめられた可笑しさ、ギャグ、パフォーマンスに大喜び、大受け。台詞のギャグで回りがみんな笑っているのに、言葉がわからなくて一緒に笑えないのはチョー寂しい(笑)。
 
 だが、回りのみんなが「ワハハハ!」と笑っているのを見て、私はなぜどこもかしこも年末の定番がこうもりなのか、ようやく理解した。
 たとえ恒例であろうと、ワンパターン、マンネリと言われようと、年の瀬はすべてを笑い飛ばして、楽しく暖かい気持ちになりたいのだ。イヤなことを綺麗さっぱり忘れ、心機一転で新年を迎えたいのだ。
 日本の年末年始のテレビ番組だって、そう。やっていることは毎年同じ。でも、だからこそ心が落ち着くし、居心地がいい。そうした気持ちになりたいのは、きっと万国共通なのだろうね。
 
 最後に、気になっていたギュルツェニヒ管の連続公演編成について。
 やっぱり2つのチームを構成したのだと思う。少なくともチェックしていたコンマス、打楽器、トランペット奏者は違っていた。もちろん何人か掛け持ちをしたのか、この日のために動員(エキストラ)をかけたのか、そこらへんの事情はわからないけどね。まあ、いいでしょう。お疲れ様でした。