クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2013/12/31 ケルン

 パリからケルンに電車で移動し、正午に到着。さっそく予約していたホテルに向かい、チェックイン。
 
 受付の女性(いかにもドイツ人ぽい太ったオバチャン)はまったく英語が話せなかった。ドイツの3つ星クラスでこれほど英語が出来ない人を受付に置くホテルも珍しい。
 
 その女性が私に何かを伝えようと一生懸命話し始めた。「Frühstück」という単語が出てきたので、朝食に関する事であるのは間違いない。だが、内容はチンプンカンプン。こちらが「私はドイツ語が話せませんよ」と返事をしても、一方的にドイツ語で捲し立て。ダメだこりゃ。
 女性の方も「こりゃアカン」と思ったのだろう。途中で諦め、「はいどうぞ」と私に部屋の鍵を渡した。
 
 部屋で荷物を下ろしながら、私は「いったい彼女は何を言いたかったのだろう?」と考えを巡らせた。
 たぶん、明日の朝は1月1日祝日なので、朝食の提供サービスに何らかの変更があるということだろう。ひょっとして朝めし無しか?まあそれならそれで仕方がないが。
 
 ホテルを出て、観光を開始。
 予め、天気が良かったら行こうと思っていた場所があった。
 ガイドブックに紹介されているような観光ポイントはすべて回ってしまっているケルンだが、どこかまだ行っていない穴場はないかとトリップアドバイザー(口コミサイト)で探し、そして見つけたのが「ケルン・トライアングル」。
 それは高層ビルの屋上から360度のパノラマを楽しむことが出来る展望デッキであった。
 
 ケルンと言えば、大聖堂。
 もちろん間近から尖塔を見上げてそのデカさを体感するのもいい。だが、少し離れた所から歴史的建造物の全容を眺めるのも一興。ライン川に架かるホーエンツォレルン橋を歩いて渡った対岸は絶好のビューポイントだが、そこからもう少し歩くと高層オフィスビルが建っていて、屋上が観光客向けに開放されている。ただし有料3ユーロ。ノンストップのエレベーターで100メートルを一気に上がる。人気スポットみたいで、エレベーターに乗り込むまで列を成していた。
 
テラスからの眺めがコレです。なかなか絶景。
イメージ 1
 
望遠レンズで近づけてこんな感じ。
イメージ 2
 
ちなみに展望デッキはガラス板で囲まれていて、眺めはガラス越しとなる。
 
 ところで、この「ケルン・トライアングル」までの道すがら、ホーエンツォレルン橋の歩行者通路の金網柵は、ご覧のような有様になっている。これ、なんだか分かります?
イメージ 3
 
 よーく見てください。鍵です。南京錠。
 スペースがまったく見つからないほどぎっしりと鍵で柵が埋め尽くされ、それが延々と続く光景はちょっと異様だ。
 
 こうした光景はケルンだけでなく、実は世界各地の観光地に架かる橋で見つけることが出来るのである。
 なんでも、こうした場所でカップルが永遠の愛を誓って鍵をかけ、二度と解錠できないように閉じたその鍵を川に投げ捨てるのだそうだ。「これで、何があっても私達は離れませんよっ!」てか。
 
アホくさ。
言っておくが、そんなことしようがしまいが大丈夫、オマエらいずれ別れるんだからよ。迷信なんだよ。
それよりも川に投げ捨てた鍵による環境汚染はどうなんだ、若者よ? オジサンはそっちのことを考えると夜も眠れんぞ!
 
・・・。
ええーーーと・・。
 
話題を最初のホテルの朝食の件に戻します(笑)。
 
 観光を終えてホテルに戻ると、受付の人が交替していて、若い兄ちゃんになっていた。これ幸いとばかり、私は兄ちゃんに英語で尋ねた。
 
「チェックインの際、受付の女性から朝食についてのインフォメーションがあったんだけど、その人はドイツ語しか話せず、何を言っているのかまったく分からなかった。彼女はいったい何を私に言おうとしたのだと思います?」
「おそらく、明日の朝食の時間帯のことでしょう。普段なら午前6時半からですが、明日は祝日なのでそれが出来ません。」
「ああやっぱり。たぶんそういうことだろうと思いましたよ。で、何時からOKなのですか?」
「ところで、あなたは何時に朝食を取りたいのですか?」
「電車のスケジュールもあることなので、出来れば午前8時には朝食を取りたいのですが。」
「分かりました。そのように伝言しておきましょう。」
 
 
翌朝。
午前8時きっかりに階を降りると、受付には昨日のオバチャンが座っていた。
彼女は私の顔を見るなり、「ああっ・・」と絶句して天を仰ぎ、理解不能のドイツ語で「●※〒▽§¶◆・・・」と話しかけてきた。
 
その瞬間、私は状況を完全に把握した。
 
「昨日、兄ちゃんと話した件が伝わっていない・・・・。」
 
もう苦笑するしかありません。まったくもう・・・。
なんだこのラテン国のようないい加減さは! おいドイツ!
で?
どうすんのさ??
 
 てっきり「どうしようもないわよ」と手を横に広げられ、部屋に戻される羽目になり、朝食抜きで出発を余儀なくされるかと思った。
 
 だが、ここで思わぬ展開に。
「仕方がないわね」とばかりに、オバチャンは私を朝食ルームに招き入れ、着席させた。どうやら何か出してくれるようだった。
 しばらく待っていると、オバチャンが料理を運んできた。マッシュルーム入りスクランブルエッグ、茹でソーセージ、茹でじゃが、オニオンスライス、ポタージュスープ、黒パン、コーヒー・・・。ウッホー!!
 
 オバチャン、私のために、私だけのために、自ら手作り料理を振る舞ってくれたのだ!
 本当は朝食の支度は従業員の仕事で、レセプション担当であるあなたの仕事ではないのでしょう。でも従業員がいなくて、言葉が通じない外国人が途方に暮れて、「それなら」と自ら腰を上げて作ってくれたわけね。嬉しいぞオバチャン!
 
 そのオバチャンは「こんなものしか出来なくてすまないね」みたいなことを言っていた(と思う)が、何をおっしゃいますか、あなた! ハム、サラミ、チーズといった普通のホテルの朝食よりもよっぽどいいぞ。
 
とても良い思い出になりました。こういうのは旅の醍醐味ですね。ダンケシェーン!