トスカネタを続けます。
一つ解らないことがある。悪徳警視総監スカルピアはトスカを我が物にする引換えとして、カヴァラドッシの処刑を回避させることを約束し、空砲による見せかけの銃殺刑を指示したにも関わらず、なぜカヴァラドッシは実弾によって撃たれてしまったのかということだ。皆さんもそういう疑問が湧きませんか?
これは単なる事故だったのだろうか、それともどこかで作為や故意が働いたのであろうか。
いくつかのことが考えられる。
1 スカルピアは見せかけ処刑を行うように指示し、副官スポレッタも忠実に命令を受けたが、その指令が末端である刑執行者に完全に伝わらず、どこかで指令が消えてしまった。
2 見せかけ処刑の指示は刑執行者までしっかりと伝達されていたが、不幸にも銃の中にたまたま実弾が入っていて、偶発事故により撃たれてしまった。
3 スカルピアは見せかけ処刑を指示したが、カヴァラドッシに恨みを持つスポレッタがこれを握り潰した。
4 そもそもスカルピアは見せかけにするつもりなどなく、「パルミエリ伯爵のように」という指示は「見せかけと思わせておいて、実際は殺せ」というものだった。
その前に一つ注釈しておきたい。
私はオペラしか知らない。原作も解説書も読んだことがない。ひょっとして原作にそこらへんの真実が明かされているのかもしれないが、私はそれを知らない。もしこの謎についてどなたか真実をご存じの方がいたら、ぜひ教えてほしい。
とりあえずオペラの中で起こった事を基に推測を続けると、普通に考えればやっぱり1か2なのかなと思う。スカルピア自身も「フェイクだ。」と語っているし。
でもドラマ的に想像を膨らませると、3とか4もありだと思うし、むしろそっちの方が面白い。
ただし仮にそうだとしても、疑問符は拭えない。
もしスポレッタが勝手に握り潰した場合、一時的にスカルピアは喜び、褒めてくれるかもしれないが、上司の職務命令に従わなかった規律違反の罪は重い。そこまでの重大な決断をスポレッタが行えるのか。ヤツはそんな玉ではない気がする。
また、スカルピアにカヴァラドッシを救うつもりなど最初からなかったとした場合、「オレはちゃんと約束を守ったぞ!」と誇らしげに言い放ち、パスポートまで作ってあげるその行動や態度が腑に落ちない。
やっぱり単なる事故なのだろうか。あんまり面白くないけど(笑)。
そういう観点に着目し、クローズアップした演出版を是非見てみたい気もするが。
それとも、全ては観た人の想像に委ねられるというのが、結局一番無難ということか・・・。