クラシック、オペラの粋を極める!

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2013/12/7 トリノ・レージョ 仮面舞踏会

2013年12月7日  トリノ王立歌劇場   東京文化会館
ヴェルディ  仮面舞踏会
指揮  ジャナンドレア・ノセダ
演出  ロレンツォ・マリアーニ
ラモン・ヴァルガスリッカルド)、ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ(レナート)、オクサナ・ディカ(アメーリア)、マリアンネ・コルネッティ(ウルリカ)、市原愛(オスカル)   他
 
 
ヴェルディを聴いた!」という満足感にたっぷりと浸ることが出来た公演であった。ソリスト一人一人が持ち味を存分に発揮し、指揮者がヴェルディの情熱を音楽にたっぷりと注ぎながら、オペラとしての物語をがっちりと構築させる。これぞオペラの醍醐味。ヴェルディイヤーの最後をばっちりと飾ってくれた。
 
 やはり功績は指揮者のノセダということになるのであろうか。
 唸り声が響くほどの激しい指揮は相変わらず、いつものとおりだが、それでいて音楽は過剰にエキセントリックに陥ることがない。それどころか、ピット内の各楽器間のバランス、歌とのバランスを絶妙に整えているため、聴こえてくる音楽がごちゃごちゃすることなく、整然と美しく聞こえるのは実にお見事。さらに音楽のツボやポイントに対する仕掛けも即妙で、ドラマチックな効果がてきめんであった。
 
 一方で、タテの統一、アインザッツの揃えについてはかなりバラバラなのだが、よく考えるとイタリア人はそういうことを気にしていないのかもしれない。彼らにとってそんなことは大して重要ではないということか。そもそもノセダの指揮自体が、そうしたタテの線に対して非常にわかりにくい。
 ひょっとしてそういうことを気にするのは几帳面な日本人だけなのだろうか?
 
 
 ソリスト歌手は押し並べて好演であった。
 一番拍手をもらっていたのは、やはりというか主役リッカルドのヴァルガス。この人、中音域の音色の美しさは世界でも最高級だろう。高音と低音の処理はそれに比べるとやや甘いのだが、まあ重箱の隅をつつくような指摘はやめよう。演技も昔は大根だったが、大分うまくなったと思う。(しかしオレも本当に偉そうだな。ヤだねえ、こういうオタクは。)
 
 O・ディカも、リリコ・スピントの痺れるような声を会場に轟かせ、客席を沸かせた。素晴らしかったと思うが、なんかこういう声ってイタリアっぽくない。いかにもスラブ系って感じ。ま、いいけどね。(ああイヤだ、こういうオタク。)
 
 ディカとヴィヴィアーニは実の夫婦だそうだ。レナートとアメーリアの夫婦役を、実の夫婦が演じるというのは、なんか複雑というかビミョーのような感じがするのだが。そこらへんどういう心中なのか、是非お二人に聞いてみたいところではある。(第3幕の幕開けで、浮気を咎める夫が妻にビンタを張るシーンがやけに迫真だったが、気のせいか(笑))
 
 ウルリカのコルネッティも重厚な歌唱が良かった。オスカルの市原愛さんは・・・「アタシ一生懸命頑張ってますっ!」が出過ぎていたが、ま、よろしいかと(笑)。
 
 
 演出のマリアーニは、以前に藤原歌劇団蝶々夫人や、パレルモマッシモ来日公演でのカヴァレリアと道化師の演出を披露したりで、既におなじみである。基本的にイタリアらしい正統的オーソドックスな演出で音楽を良く引き立てていた。
 第3幕の舞踏会の場面を赤色に飾って綺麗だったが、それが血を表していて殺人を示唆する当たりは、なかなか面白かった。
 
 今回一つ感心したことがある。
 第2幕で、レナートと暗殺団の攻防にいたたまれなくなったアメーリアが自らヴェールを脱いでしまうシーン。あそこであるが、私はなんとなく違和感を感じる。自らヴェールを脱ぐ必要なんかないだろう。だってレナートはリッカルドの忠臣。命を懸けてでも守ってくれるだろうから(それがリッカルドからの命令だから)、黙ってレナートを信頼して見守っていればよかったし、仮に争いを止めに入ったとしても、ヴェールを付けたままで良かっただろう、と。
 今回の演出では、敵にヴェールを剥がされるというふうに演出されていたが、我が意を得たり。その方がよっぽど自然だと思う。