クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

録音とライブ

 先月のベルリン・フィル来日公演で驚異的な演奏を耳にし、興奮冷めやらぬ中で衝動買いをしてしまった物が二つある。
 一つは来年1月下旬から2月初めにかけて来日するベルリン・フィル八重奏団の公演チケット。コンマス樫本大進、ホルンのS・ドール、クラリネットのW・フックスらベルリン・フィルの首席奏者級による室内楽だ。
 凄腕の名手たちが繰り広げるアンサンブルで「あの感動をもう一度」と目論んだのだが、チケットを買った後にメインプログラムであるシューベルトの八重奏曲を久しぶりにCDで聴いて、ちょっとがっくり。
 曲がイマイチつまらんのだ。
 もともと私は室内楽はあまり聴かないのだが、あえて聴くとしたらバルトークとかショスタコーヴィチとかラヴェルとか、そういう研ぎ澄まされた曲が好みである。それらに比べると、シューベルトは何ともぬるい。うーんこれじゃあのハルサイの感動は蘇らんわなあ・・・。
 
 もう一つ思わず買ってしまった物。ラトル指揮ベルリン・フィルの「春の祭典」CD。
 これはまさに来日公演で披露し、我々の度肝を抜いた曲なのだから大丈夫でしょ。今度こそあの感動をもう一度! さっそく聴いてみた。
 
・・うーーむ・・・(笑)。
こんなだったっけか、先日の来日公演の演奏。微妙である。なんつうか迫ってくるもの、グイグイくるものがCDではないんだよねー。
 
やっぱり実演と録音は違うんだなあ。
こんな当たり前のこと今さら言うまでもないだけどさ。
 
録音というのは要するに缶詰なのである。缶詰の料理はどんなに元が良くても、いくら温め直しても、調理したてのホヤホヤの料理にはかなわないのである。改めてそう思った。
 
 ただし、一つ面白いことに気が付いた。
 ライブではベルリン・フィルの演奏の凄さ、オーケストラの性能の高さに耳が奪われたのだが、録音ではラトルの個性に溢れた解釈が手に取るように実感できたのである。
 
 推測できることとしては二つ。
 一つは録音の場合、ミキシングによって音をいじることができるので、プロデューサーやエンジニアの協力で、指揮者の要求がより色濃く反映された物を作ることが出来るということ。
 
 もう一つは、ラトルは、ライブの本番ではリハーサルとは違ってオーケストラを束縛から解き放ち、自主的で自由な演奏をさせるように仕向けており、その効果が出ているのではないかということ。ライブのステージにおいて音楽を昇華させボルテージを上げるためにあえてそうしていて、その結果としてオーケストラが伸びやかに演奏し、その上手さが際立って聞こえるのではないか。
 
 こうしたそれぞれの違い、長所と短所を踏まえ、録音とライブはあくまでも別物ということを前提にしさえすれば、それぞれの聴き比べというのはそれなりに発見もできて面白いと思った。
 
ただし良い子の皆さん、CDにライブの再現を期待することだけは絶対にやめましょう(笑)。
 
そうそう、シューベルトの八重奏曲も、ライブで聴けばひょっとすると面白さに開眼するかもね。楽しみにするとしますか。