クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

リゴレット

 今年はヴェルディイヤーなので、世界の各地でヴェルディのオペラ上演が目白押し。いよいよ間近になってきたエクサン・プロヴァンス音楽祭でもリゴレットを鑑賞する予定だが、なぜかどういうわけか最近このオペラによく当たる。
 昨年は5月にチューリッヒで、12月にミュンヘンでこのオペラを見た。今年はエクスに加えて、9月にスカラ座来日公演、10月には新国立劇場公演が控えている。別にうんざりというわけでもないが(うんざりなら行かなきゃいいわけだし)、それでもこれだけ立て続けだと、ちょっとどうかなとは思う。
 
 演出的に見ると、上記5公演ははっきりと色分けされる。チューリッヒとスカラは伝統的でオーソドックスな舞台。これに対しミュンヘンは前衛志向だったが、裏目に出て大失敗。エクスと新国立劇場は共に注目の現代演出家なので、どんな舞台になるのかとても楽しみである。
 
 エクスでタイトルロールを歌うのは、ゲオルグ・ガグニーゼ。彼はスカラ座でも来日して同役を歌うことになっている。近年知名度を上げているガグニーゼだが、日本公演に限って言うと、ヌッチとのダブルキャストというのはかなり辛い。お客さんの目当てがヌッチなのは当然で、完全に裏キャスト扱い。これはどうしようもない。ちょっとお気の毒である。
 実は昨年5月スカラ座でトスカを聞いた時、彼がスカルピアを歌ったのだが、あまり強い印象が残っていない。なので、エクスでは改めてしっかり聞いてこようと思う。
 
 
 ところでこのリゴレットヴェルディの中期の傑作と評されているが、果たして人気の面ではどうなのだろう。皆さんはお好きですか?
 易しくて分かりやすい音楽だし、誰でも知っている「女心の歌」を始めとする珠玉のアリアが散りばめられているので、そういう意味ではポピュラーな部類には入るだろう。
 だが、作品の評価と人気の両面で高い支持を得る椿姫、アイーダオテロドン・カルロなどに比べるとやや劣るか。
 
そこらへん、ひょっとしてストーリーに原因があるかも?
単なる好色であるマントヴァ公爵、醜い姿のリゴレット、それに誘拐、殺人・・・。
 
 ジルダという女性もいかがなもんでしょうか。
 プレイボーイに弄ばれ、別の女に手を出す現場を目撃しても、それでもやっぱり愛する気持ちを捨て去れず、ついにその男の身代わりになって自ら殺される道を選ぶって・・・それってどうよ?
 なんかいかにも男性目線で、可憐で一途な女性に仕立て上げられているような気がする。女性の皆さんの共感を得られないような気がするのだが・・・。
 それとも、世間から隔離されて育てられると、ああなっちゃうのでしょうか。
 
 ただ、やはりヴェルディの音楽は素晴らしいと思う。
 第3幕、マントヴァ公爵、マッダレーナ、リゴレット、ジルダの四重唱はとても美しいし、ジルダがついに一大決心をし、殺すか生かすかで兄妹間で言い争いをしているスパラフチーレ家に飛び込んでいく嵐の場面の音楽は、緊迫感もあり、大いに心が揺さぶられる。
 
 そういう意味で、このオペラはトロヴァトーレと同様に、音楽がストーリーを軽々と飛び越えてしまった、「いかにもヴェルディ」な作品と言えそうだ。