クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2013/2/23 東京フィル

2013年2月23日  東京フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会   オーチャードホール
シェーンベルク  グレの歌
指揮  尾高忠明
合唱  新国立劇場合唱団
望月哲也(ヴァルデマル王)、佐々木典子(トーヴェ)、加納悦子(山鳩)、吉田浩之(道化クラウス)、妻屋秀和(農夫、語り)


 あれからもうすぐ2年か・・・。

 被災された方、身内をなくされた方、避難生活を余儀なくされている方など、未だに多くの方々が苦しんでいる中で、こんな趣味のことを書くのは心苦しく申し訳ないが、あの時、震災と原発事故のせいで、チケットを買って心待ちにしていた数々の公演が、一瞬にして吹っ飛んでしまった。
 もちろん、あの時はそれを受け入れることが出来た。あれだけの災害と事故なのだから当然だと割り切れた。
 だが、そうは言いつつ、キャンセルになってしまったことが甚だ残念だった公演もいくつかあって、そのうちの一つが、東京フィルの100周年記念コンサート「グレの歌」だった。

 楽しみにしていた我々ファンもそうだが、それ以上に団員を始めとする関係者の皆さん、指揮の尾高さんらの当時の断腸の思いは、推して知るべしだろう。苦渋の決断で公演を取り止めつつ、「絶対にもう一度やりましょう!」と語った尾高さん。その尾高さんと東京フィルの壮絶な決意と執念が実った今回の特別公演は、単なる聴衆の一人である私でさえも、震えるような大きな感慨を覚える。しかも、グレ初演100周年の日と重ねる絶妙さ!ここに至るまでの幾多の試練と復活の物語を、それこそドキュメンタリー番組(別に映画でもドラマでもいいぞ)として製作してほしいくらいである。

 この公演のために、たった一日の公演のために、オーチャードホールに特設ステージを作った。合唱、ソリスト、オーケストラ合わせて270人がステージに所狭しと陣取る壮観さ。旧新星日響を吸収した東フィルだからこその為せる業だが、その空前とも言える巨大さは、100年の節目を迎え、震災による公演中止の困難を乗り越えて、新たに未来に向かって歩もうとする東京フィルの意気込みそのものに見えた。

 演奏は、当然と言うべきか、オーケストラのみなぎるパワー全開で、気合が入り、迫力に満ちた立派なものだった。奏者一人ひとりのやる気、音に込めた心意気がビンビン伝わってきた。

 本当のことを言うと、一部ソリスト歌手の力量面においてもう一段の高みに達してほしいと思った部分があったし、合唱とのバランスや全体的なアコースティック処理などで、もう少し改善を図ってほしかった部分もあった。

 だが、「文句は言うまい。十分ではないか。」と思った。
 これは単なる東京フィルハーモニー交響楽団の一公演ではない。今の日本の姿なのだ。復興という困難に立ち向かいながらも、現状で持ち合わせる総ての力を結集させ、結実させたのである。これが今できる最大限の成果なのである。惜しみない拍手を送ろうではないか。