クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2013/2/9 アムステルダム

 アムステルダムへは、パリ始発の国際特急タリス(フランス国鉄)を利用することにした。午前8時52分にブリュッセル南駅を出発し、10時41分にアムスに到着する予定の電車である。
 
 切符は前日のうちに購入しておいた。予め調べておいた上記の電車を指定し、係員にしっかり伝えたつもりだったのに、発券された切符の電車はどういうわけか一時間後の9時52分発のものだった。すぐに気が付き、希望の電車に直してもらった。「まったく駅員も適当なやっちゃな」と思ったが、この一時間後の同じタリスのアムス行きが後ほど大いに関わってくるとは、この時知る由もない。
 
 パリからやってきた電車は定刻ピッタリにブリュッセル南駅に到着した。電車に乗り込み、指定席に座り、出発を静かに待った。
 
 5分経過し10分経過しても、一向に出発しない。
 フランス語と英語による車内アナウンスがあった。運転手が交代するが、交代となる運転手が到着しておらず、15分ほど遅れるというものだった。
 出たよ、フランス国鉄。毎度おなじみの遅延。もはや笑っちゃうね。しょうがない。まあ15分くらいなら許す。そもそもコイツら15分なんて遅延とすら思っていないだろ。
 
 20分、30分・・・出発の気配がない。再び車内アナウンスがあった。今度の言い訳は「テクニカル・プロブレム」ときたよ。なんだそりゃ?まったくクソめ。
 
 遅延が45分を過ぎた頃から、さすがに私もイライラしてきた。いつ出発するのか、あとどれくらい待たされるのか、その後の情報は全くない。周りの乗客は着席してひたすらじっと待っている。
 不思議だ。どうしてイライラしないのか?こういったトラブルが日常茶飯事である自分たちの国のシステムについて、どうして「そもそもおかしい」と思わないのか?
 
「さてと、どうしたものか・・・」私は頭を巡らせていた。発券誤りでたまたま知った一時間後の電車のことがよぎった。
「この電車に見切りをつけ、次の9時52分の電車に乗ってしまおうか。」
 だが、決断することが出来なかった。
 タリスは全席指定車である。勝手に乗り換えていいものか。仮に乗り換えたとして、どこに着席する?検札が来たら何て説明する?相手は厄介なフランス人だぞ?こっちの英語だって決して堪能ではないぞ。それに、周りの乗客はみなじっと堪えて出発するのを待っているではないか・・・。
 
 もうすぐ一時間、という時だった。車内アナウンスが入った。情けないことに、何を言ったのかほとんど聞き取れなかった。
 だが、このアナウンスと同時に、車内の何人かの人たちが自分の荷物を担いで電車から降りたのを見た瞬間、私もとっさに立ち上がった。ほとんど無意識、反射的だった。
 彼らの後を追った。彼らがどこに行くかは分からない。分からないが、何となく確信の予感がある。とにかく後を付いていく。
 たぶんそうだ。彼らは9時52分発に乗り換えようとしている。うん、間違いない!
 
 やっぱりそうだった。9時52分発アムステルダム行き特急タリス。私、それから同じ境遇の仲間がバタバタと乗り込んだ。
 
定刻となり、電車はゆっくりと動き出した。滑り込みセーフ。
さて。これからどうする?
 
 少なくとも私一人ではないので、車内検札に関しては大丈夫だろう。私と同じく乗り換えたフランス人ベルギー人が私に代わって説明してくれるだろう。
 問題は座席だ。どうやらほとんどの連中は、車両連結部分もしくはBAR車両内で立ちんぼするようだ。
 私はというと、空いている座席を見つけてちゃっかり座ってしまうほど図太くないが、かといって二時間の立ちんぼには耐えられない。どこか落ち着ける場所がないか、車内を探し歩いた。すると、ある車両の出入り口脇に補助座席があるのを発見した。ラッキー!ここでいい!とにかく座れればいい!
 
 途中、車内検札係が何度も脇を通ったが、一度も切符の提示を求められなかった。係員も事情を承知していたようだ。立ちんぼ人間や補助席に座っている人間は、そういう連中である、と。
 
 こうして一部の人間がうまく乗り換えてアムスに向かうことが出来た。もっとも、乗り換えた大半の人は車内で立ちんぼだったわけで、乗り換えが絶対正解だったとは言えない。急いでいるのか、そうでもないのかにもよる。慌てずに当初の電車の復旧を待ち、もしその電車がその後速やかに出発したのであれば、それでも良かっただろう。
 
 私の場合、説明も聞き取れず、状況も分からなかったが、とっさに反射的に一部の人間に倣い、その人たちに付いていくという行動に打って出た。それは、私にいつの間にか備わった海外での危機回避信号の点滅によるものだったと思う。そして、この信号は、実はもう一回点滅することになる・・・。
  
 アムステルダムに午前11時50分到着。天気は曇り。
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 オペラの開演は午後5時半のため、昼食を取り、ホテルでの休息の時間を確保すると、観光する時間があまりない。電車のせいで1時間潰れてしまったが、失った1時間は貴重だった。
 
 今回アムスでどうしても行きたい場所があった。それは「エルミタージュ・アムステルダム」。
 ロシアのサンクト・ペテルブルクにある世界的なエルミタージュ美術館が、ここアムステルダムに分館を設け、2009年にオープンしていた。これまでサンクト・ペテルブルクでしかお目にかかれなかった至宝の一部がアムスで見られる大チャンス。これは何としてでも行かないと!
 
 ホテルにチェックインし、荷物をおろし、昼食を取り、さて美術館に行こうとしたところで、天気が変わり、雪が降ってきた。雪景色のアムステルダム。古い街並みと運河が白い雪に映える。なんて風情があり、美しいこと!
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  エルミタージュでは、ちょうど「ゴッホ展」開催中だった。そうかあ、エルミタージュ美術館が所蔵するゴッホの作品をメインにした企画展なのだな。なるほどー。
 
 美術館は人だかりだった。さすがゴッホ。改めてその人気の高さに唸る。
 展示品を一つ一つ鑑賞していく。なんか、どれも見覚えがある。絵の説明プレートを確認すると、作品の所蔵元は皆「ゴッホミュージアムアムステルダム」である。
「ん? なんだ? あれ~??」
 
 なんとまあ、全部ゴッホミュージアムからの出品であった。
 なぞが解けた。ゴッホミュージアムが現在改装中のため、ここエルミタージュに移転し、常設展を開催していたのだ。
 
 え? ということは? 本家のエルミタージュは?? サンクト・ペテルブルクは??   ガクッ。
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