指揮 リッカルド・ムーティ
合唱 バイエルン放送合唱団
ムーティとバイエルン放送響は、長きに渡り良好緊密の関係が続いている。定期的に客演しており、レコーディングも少なくない。群雄割拠のオーケストラ王国ドイツの中で、ムーティが唯一足場にしているのがバイエルン放送響である。
何でも、前音楽監督マゼールが自らの後任としてムーティを指名したが、本人がこれを固辞したため、次善の策でヤンソンスに白羽の矢が立ったとか。うーん、惜しかったなあ。その時はまだムーティがスカラ座で揺るぎない地位にあった。あと数年ずれていたら・・・残念。
何はともあれ、今回大好きな指揮者と大好きなオーケストラの豪華コラボを聞く絶好のチャンスを見つけられたのは幸いだった。昨年と同様に年末から年始にかけての旅行を計画していたが、この公演を見つけた瞬間、私は計画を変更し、旅程を前倒しした。そういう意味では、本公演こそが今回の旅行のハイライトと言うべきかもしれない。
会場のヘラクレスザールは、王宮レジデンツの広大な建物の一角にある。ムジークフェラインほどきらびやかな装飾はないが、伝統の重みが感じられる厳かなホールである。ここでヨッフムやクーベリックなどによる数多の歴史的名演が繰り広げられてきたのかと思うと、ゾクゾクする。バーンスタインが振り、ホフマンとベーレンスが歌った「トリスタンとイゾルデ」の歴史的名盤も、ここでのライブだった。
収容規模は決して大きくなく、客席数は1500~1600程度ではないだろうか。音響は、私が聴いた1階前方は、豊潤かつクリアで大変心地良かった。
それにしても、ムーティはいつもながらカッコいい。若々しく71歳に見えない。男のオレでも惚れ惚れしちゃうのである。
一曲目、メンデルスゾーンのイタリア。ドイツ音楽であるが、タイトルのイメージそのままに明るく華やかな曲。ムーティはシカゴ響との今シーズン、メキシコ、中国、韓国などの外国ツアーでこの曲を演奏する。いわば、‘挨拶代わりの得意技一発’というわけだ。
二曲目、シューベルトのミサ曲。ムーティは随所にわたって劇的なパッションを鏤め、この曲を教会内の音楽から、コンサートホールにおける壮大な響きに再生させる。それでいて、オーケストラ、合唱、ソリストの間の響きのバランスと明晰さには常に注意を払い、結果としてこの上ない美しさを醸し出している。素晴らしい!
それにしても、バイエルン放送響はうまい! 上手いのは先日の来日公演で実証済みなのに、改めて唸る。
そう言えば、東京でのベト6、ベト7公演の日、目をキラキラ輝かせて演奏に聞き入っていた小さな女の子がいたっけ。ほんとうに嬉しそうな表情を浮かべていた。
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