指揮 エリアフ・インバル
合唱 二期会合唱団
澤畑恵美(ソプラノ)、竹本節子(メゾ・ソプラノ)
今回の公演では、何を隠そう心に期するものがあった。
10日前に聞いた交響曲第1番の公演の記事で、「だって素晴らしいんだもん・・・」なんていう、ややごまかし気味の感想でお茶を濁したわけであるが、この日は、是非もう少しその秘密というか真実というか、「なぜ素晴らしいのか」「素晴らしさの奥底にあるものは何なのか」を探りたいと思ったのだ。果たしてインバルは、オーケストラにいったい何を仕掛けているのであろうか?
ということで、復活を聞きに行ったというより、「インバルの謎」を解き明かすために、私は東京芸術劇場に出掛けた。
ところが・・・。
またもや私はやられてしまったのだ。呆気無く。当初は冷静な分析を試みたわけであるが、途中からそんなものどうでもよくなってしまい、やがて壮大な音響と熱狂の渦に巻き込まれ、飲み込まれてしまったのである。
まあ、案の定と言おうか・・・。
演奏中に理性を働かせるのは無理だと悟った私は、帰宅後、2008年から開始した自身のブログ記事で過去のインバルの公演の感想を振り返ってみた。
いくつかの記事から抜粋してみると、こうだ。
「オーケストラが持つMAXの音、出力100%の音を要求し、それを全面に押し出して勝負している。」
「インバルは指揮をしながら叫んでいる。同時にオーケストラに対しても「叫べ!」と煽っている。」
「インバル自身が音楽のエネルギー、充満するマグマそのもの。彼の力強くて熱いタクトに率いられれば、オケもつい100%以上の力を発揮してしまう。」
「オーケストラの能力を最大限に引き出すことが出来る究極の才能を持った指揮者」
『オーケストラの能力を最大限に引き出す』ことは、簡単なようだが実はとても難しい。
まず、オーケストラの全ての奏者が指揮者のことを100%信頼しないと無理。
次に、指揮者にオーケストラの最大限を掌握するだけの度量がないと無理。
それから、作品の解釈に絶対の自信を持ち得ていないと無理。
更には、最大限を引き出すための言葉、エネルギー、パワー、技術がないと無理。
これらを全て持ち合わせた指揮者のことを何と呼ぶか?
答えは『カリスマ』。
そう。インバルは『カリスマ指揮者』。
つまり、そういうことだ。