クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2012/8/14 ウルビーノ

 予定では、この日もペーザロ市内を歩いて巡る計画だったが、変更して郊外のウルビーノに行くことにした。
 元々ウルビーノは翌日の15日に行こうと計画していた。急遽予定を前倒ししたのは、15日が祝日であることに気が付いたからである。たいていの場合、祝日は、お店や官公署それに美術館などの観光スポットがお休みとなる。せっかくウルビーノに出かけて主な見どころが閉まっていたら、それこそ空振り三振もいいところだ。
 
 その一方でペーザロでは、「ロッシーニの家」や「市立美術館」などの観光ポイントは15日も営業していることを、海辺にあった観光案内所に立ち寄って確認済だった。(酔っ払って海岸をフラフラと徘徊し、ベンチに寝っ転がりながらも、ちゃんと頭を働かせてやるべきことをやった。本当はしっかりしてんだぜ、オレ(笑)。)
 
 ウルビーノ世界遺産。中世の頃、丘の上に造られたこの町は名門貴族の統治により隆盛を極め、「理想の都市」と称された。15世紀のフェデリーコ公の時期に宮廷文化が栄え、彼の芸術の庇護の下、ルネサンス芸術が花開いた。ラファエロが誕生したのはちょうどその頃。この地に天才が出現したのは決して偶然ではない。
 古い町並みは見事に残されていて、訪れた人を中世の世界にいざなう。私自身、「いつか訪れたい」と願っていた憧れの街だった。
 
 そのウルビーノを目指すには、ペーザロを出発拠点にするのが一番便利。駅前のターミナルから一日に何本もバスが出ている。所要時間は約1時間。ラピダ(急行)という直行便があって、それだと更に15分くらい早い。初めての人は発着時間やバス停の場所などで迷うかもしれないが、ターミナルにはバス会社の営業所があるので、そこで往復切符を購入すると同時に、時刻表やバス停の場所をしっかり確認すれば問題ない。(「普通」と「急行」では、切符の値段も停留所の場所も違うので、注意。)
 
 午前10時にウルビーノ着。バスを降りると目の前に城門があって、その門をくぐり、坂を登ると、そこはもう旧市街の中心レップブリカ広場であった。街は世界中からの多くの観光客で賑わっている。
 
 最大の見どころ、ハイライトはドゥカーレ宮殿内にある国立マルケ美術館だろう。ルネサンス期の貴重な芸術作品が収蔵されている。中でも、ピエロ・デラ・フランチェスカの傑作として名高い「笞で打たれるキリスト」は、何とも不思議な絵柄でありながらどこか惹きつけられるものがあり、「いつか見たい」と思っていた作品で、この絵の前に立った瞬間は感動で震えた。
 
 もっとも、この美術館がローマのバチカン美術館やフィレンツェのウフィッツィ美術館、ミラノのブレラ美術館などのような名品の数々が綺羅星の如く展示されているかといえば、そうでもない。
 意外なのは、ラファエロの生誕地であるにもかかわらず、彼の作品がたった一つしか収められていないこと。なんでも、元々はなかったそうで、「ゆかりの地だというのに、作品が一つもないのはあまりにも寂しい」ということで、フィレンツェからお情けで一つ譲ってもらったのだとか・・・。
 
 そのラファエロの生まれた家が、彼の名前にちなんだ‘ラファエロ通り’に面したところにあり、一般公開されている。かなり急な坂道になっているそのラファエロ通りを登り切ると、広場にラファエロ銅像がある。
 
 それ以外にも、ドゥカーレ宮殿に隣接するドォーモや、室内装飾が神々しいほどに美しいサン・ジョヴァンニ祈祷堂、サン・ジュゼッペ祈祷堂など、見どころ盛りだくさん。城壁を回り込むようにして散策すると、世界遺産の街を眺めるパノラマが望めて、ため息が出るほど美しい。
 
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 ウルビーノは想像どおり、期待どおりの素晴らしい街だった。本当に楽しい一日だった。
 実は、マルケ美術館にて、楽しみにしていたピエロ・デラ・フランチェスカの展示作品のうち、一つが他の美術館に貸し出されていて、見ることが叶わなかった。普通なら残念がるところだが、私は全然悲しくなかった。「また来ればいいや。」単純に、そう思った。
 
 この時点で、旅行の最大の目的であるロッシーニのオペラをまだ一つも鑑賞していない。だというのに、私はペーザロに戻るバスの中、もう既に「来年もまた来ようかな・・・。」などと考え始めていた。