クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2012/8/13 ピアノリサイタル

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2012年8月13日  ブルーノ・カニーノ ピアノコンサート  ロッカ・コスタンツァ(コスタンツァ要塞)
ロッシーニ  老いのいたずら集より  旧体制の見本、慌ただしいロココ風の前奏曲、悲嘆
ドビュッシー  映像第1集、子供の領分
 
 
 ロッシーニ・オペラ・フェスティバル(ROF)の主たる本公演はもちろんオペラであるが、期間中はそれ以外にも様々なプログラムが用意されている。オペラのコンサート形式上演、アカデミア研修生による発表会、歌手のリサイタル、ロッシーニ関連のコンサートなどなど。
 今回の公演はその中の一つ。ただし、ROFの主催による自主公演ではなく、関連もしくは共催のような位置づけ。フェスティバルのプログラムの中にはいちおう入っているものの、チケットはボックスオフィスでは発売しておらず、会場で直接購入した。
 
 この日は他会場でソニア・プリーナという歌手のリサイタル公演もあったのだが、迷った挙句、こっちにした。理由は、ロッシーニピアノ曲を私はまったく知らず、どういうものか興味があったこと、もう一つは、15世紀に建てられたという史跡での野外コンサートだったので、きっと趣きがあって良いだろうと思ったからである。
 ちなみに、ピアニストは名前すら知らなかったが、調べてみると、著名なソリストの伴奏を務めたり、それなりの活躍をしていて、来日の経験もある。
 
 チケット代は一律10ユーロ。1千円。安っ!そして自由席。
 開演の30分前に会場に赴いて入り口でチケットを買い、そのまま入場すると、ステージでは出演のカニーノ氏がまだリハーサル中だった。「あらあら、お客が入りだしているのに、随分とのんびりだのう」なんて思いながら適当な席に座り、足を投げ出してそれを見学していたら、そこへ係の人が慌ただしくやってきた。そして「まだ開場していません!退席してください!」と私を含む何人かのフライング入場客を外に追い出し始めた。あら、まだだったのね(笑)。そいつは失礼。でも、だったら、ちゃんと入り口閉めとけってば。
 
 改めて再入場し、会場を見渡す。外観は確かに要塞で歴史を感じさせるものだったが、内部は普通に改修されていて、そこは単なるイベント会場。趣きはイマイチである。お客さんは、ROFを目当てにやってきた人というより、地元のご夫婦や家族連れが多い。ロッシーニマニアでも何でもない普通の地元民にとっては、難しくて高いオペラはちょっと敬遠だが、チケット代が安くて気軽なピアノコンサートなら行ってみよう、みたいな感じだろう。
 
 と、そこへ、一人のご老人が客席に入ってきた。おお!ロッシーニオペラの第一人者で、日本でも絶対的な評価と人気を確立している指揮者アルベルト・ゼッダ氏ではないか!人は彼のことを「ロッシーニの神様」と呼ぶ。
 私は駆け寄って声を掛けた。
「マエストロ。ここでお目にかかれて嬉しいです。何度も日本に来て素晴らしいロッシーニを聴かせてくれて、とても感謝しています。どうもありがとうございます。」(英語。最後の「ありがとう」だけイタリア語。)
 
 ゼッダ氏はちゃんと起立してくれて、ニコニコしながら私の差し出した右手を握り返し、「グラッツィエ、グラッツィエ」と返事してくれた。
 
 どうしてゼッダさんがこんなところに顔を出したんだろうと不思議に思ったが、よく考えてみたら、彼はROFの芸術監督の職にある人だった。自分がタクトを振る公演以外にもこうして顔を出して、フェスティバル全体の様子や出来を見渡しているのだろう。
 
 肝心のピアノコンサートであるが、「普通」である。ピアニストもリラックスしちゃって、張り詰めたものがなく、演奏が緩い。野外というのがそうさせているのだろうか。途中から「こりゃ、サロンコンサートみたいなもんだな」と、こちらも緊張と集中を解除してしまった。涼しくて気持ち良い夜風に吹かれながら、「さて、終わったら、夕飯は今度は何食おうかな??」などと思いを巡らし、聴いていた。