指揮 パオロ・カリニャーニ
南紫音(ヴァイオリン)
サン・サーンス ハバネラ、序奏とロンド・カプリチオーソ
サン・サーンス 交響曲第3番オルガン付き
長くフランクフルト・オペラの音楽監督を務め、名門バイエルン州立歌劇場にもたびたび客演しているカリニャーニは、オペラ界において着実にキャリアを築いている注目の指揮者である。先日も、二期会オペラでも濃密な音楽を聞かせ、楽しませてくれた。
一方で、既に読響とは何度も共演していて、オペラだけでなくコンサートにおいても非凡な才能を披露している。こうして何度も呼ばれるということは、楽団からの信頼も相当に厚いということだろう。そして、その良好な関係と充実の成果は、この日の演奏でも十分に伝わった。
‘プログラムの中’では、メインの「オルガン付き」が圧倒的に素晴らしく、鮮やかだった。イタリア人らしい燃焼度の高い演奏だったが、かといって陶酔しきって忘我の境地に陥ることなく、奏者に的確な合図を送っていて、これが見事に音楽のツボにはまっていた。
「オルガン付き」は、やはりサントリーホールのように本格的なオルガンが備わったコンサート専門ホールで聴くのが良い。オルガンの真下のP席で聴いていたが、そのオルガンが鳴り響くと、座席ごと振動して、痺れるような感覚を味わえる。第4楽章冒頭の「ジャ~ン!」という強奏はもちろんだが、第2楽章の穏やかな旋律を支える低音の「ボーッ」という音さえもが、なんとも言えない臨場感でゾクゾクする。
いつか叶わぬものかと願っていることがあって、それはこの曲を大聖堂の中で聴くこと。残響音の効果に長けた教会で、天井から降り注がれるかのようなオルガンの響きに包まれながらこの曲を聴いたら、どんなにスゴいだろうと思う。実際、録音では教会備え付けのオルガンで演奏された盤がいくつかある。でも、やっぱり生で聴くのが醍醐味だ。
さて、話をこの日の公演に戻そう。最後にアンコールがあって、「マノン・レスコー」間奏曲が演奏された。
上で、「‘プログラムの中’では、メインのオルガン付きが素晴らしく・・・」と書いたが、実は、この日一番の名演は、このアンコール。カリニャーニも、お国物ということで、この時ばかりは完全に陶酔しきって忘我の境地に陥っていた。まさに灼熱のマノン・レスコー。オーケストラもあれだけ煽られたら、熱くならざるを得ないだろう。