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2012/5/5 ブンデスリーガ

2012年5月5日  ブンデスリーガ第34節   シュトゥットガルトメルセデス・ベンツ・アリーナ
 
 己の実力を信じ、夢の舞台での成功を目指して、欧州列強国の一つドイツに渡ったサムライたち。今回の観戦は、そんな3人の勇姿を見る絶好のチャンスだったのだが・・・。
 
 実は直前のネット情報(持参したタブレットPCが役に立った)で、ヴォルフスブルクの長谷部選手がこの試合の遠征に帯同しないことを知っていた。体調不良であるとのこと。
 ちっ。長谷部見たかったのになあ。まあ仕方がない。長谷部が出場しないヴォルフスブルクなんかにゃこれっぽちの思い入れもない。岡崎よ、酒井よ、ヴォルフスをコテンパンにやっつけてしまえ。
 
 この日はブンデスリーガ2011-12シーズンの最終節。
 既にリーグ優勝の栄冠は香川が所属するドルトムントに決まっていた。普通なら単なる消化試合となるところだが、国内リーグで上位に食い込めば、来シーズン、ヨーロッパリーグへの挑戦権を得られる。そのチャンスがある両チームにとって、最後の最後まで気を抜けない熾烈な戦いが待っていた。
 この日の天候は不安定で、雨が降ったりやんだり。はるか遠くに聞こえる雷鳴。風雲急を告げる、まさに‘嵐の予感’であった。
 
 キックオフの45分前に自分の席に向かうと、隣に50代後半くらいの男性が腕組みしながらデンと座っていた。お一人様での観戦で、いかにも‘シュトゥットガルトこそ我が人生’みたいな筋金入りサポーターの雰囲気プンプン。私が横に着席すると、「ん?なんだ?東洋人が何しに来たんだ?」みたいな目で私をジロジロ見る。やだなあ。怖そうだなあ。頼むから放っておいてほしいなあ。
 こちらは視線の先を遠くに向けて、なるべく関わらないようにしていた。(要するに、無視していた。)が、お隣さんからのジロジロ攻撃は一向に止まない。
 オヤジがついに話しかけてきやがった。ドキッ。
 
 「◯▼§々□◯゛・・オカザッキィ・・・ザカイー・・∀□〒÷◯??」
 
 なるほどね。そういうことね。
 ドイツ語だったが、何を言ったのか分かった。
「キミは岡崎くんと酒井くんを応援しにやって来たのかい??」
 
 まあ、そうではないとも言えるし、そうだとも言える。面倒くさいので、「Ja! Natürlich!」(そうです!もちろん!)と答えた。
 ドイツ語で会話できないくせにドイツ語で答えてしまった私がバカだった。(「ナチューリッヒ」なんて言わなければ良かった。)
 こわもてのように見えたオヤジがニコッと笑って、うれしそうにドイツ語でまくしたてた。
「□∋々●×・・△∀〆◯※! ◯÷々§▼??」
 あー、うぜえ。だからわからねえっつうの(笑)。
 へらへらと愛想笑いを返していたが、それでもしつこく話しかけてくるので、「すみません、私、ドイツ語話せません。」と答えると、「Ah, So」と残念そうにため息をついた。
(「ああ、そう」という言葉は、実は、ドイツ語と日本語は同じなんですよね!)
 
 ジロジロと私のことを見ていたのは、要するにこのオヤジ、話し相手が欲しかっただけなのだ。きっと愛するチームの紹介や自慢話を、異国からの観戦者に滔々と語りたかったのだ。
 もし私がドイツ語堪能で、オヤジの話に「へえ!そうなんですか!?なるほどね~!」などと相槌を打ってあげたら、さぞかし喜んだことであろう。おあいにく様、残念でした。
 
 
 そうこうするうちに、両チームの選手たちがウォーミングアップのためにピッチに登場してきた。最初にヴォルフスの選手が出てくると、耳をつんざくような強烈ブーイングの洗礼。次に地元のVfb(ファウ・エフ・ベー。ファンはみんなこう呼んでいる)選手が出てくると盛大な拍手、応援歌の大合唱。いいなあ、この雰囲気。最高。
 
 しかしこの後、私は呆然としてしまうほどの事実に気がつく。ピッチでウォームアップを行なっている選手を探せど探せど、岡崎の姿が見当たらない。あれ~??岡崎~??
 私は隣のオヤジに尋ねた。英語で。「What's wrong with OKAZAKI?
 オヤジは質問の答えがわからなかったのか、こちらが言った質問そのものが理解できなかったのか、とにかく両手を広げて「さあね」のポーズ。
 
 岡崎も欠場かよ!?マジかよ!?長谷部と岡崎を見るためにここにやってきた私はいったい何だったんだ??これだったら、ドルトムントに行ったほうが良かったじゃんか!?頭を抱える私。
(後でネットで調べてみたら、岡崎くん、インフルエンザでダウンだって。)
 
 結局、楽しみにしていた日本人選手の登場は酒井だけになってしまった。仕方がない。今さらどうしようもできない。酒井くんの活躍を期待しよう。純粋にブンデスリーガの試合を楽しむとしよう。必死に自らに言い聞かせた。
 
 だが、両チーム選手が入場すると、私の煮え切らないような萎んだ気分は、一気に晴れた。
 
 立錐の余地もない満員の観客のボルテージが最高潮に達し、選手たちを奮い立たせようとスタジアムは大歓声に包まれた。コアなサポーターが陣取るゴール裏は、横断幕をいっぱいに掲げ、クラブの栄光とプライドを誇示。熱狂!沸騰!凄い!凄い!
 よーし、こうなったら私もニワカ・シュトゥットガルターになって、徹底的に応援してやるぞ!
 
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 これだけ熱い応援を背にしたら、選手も気合が入るというもの。当然、Vfbの選手は前がかりで積極果敢にゴールを狙いに行く。
 ところが、前がかりになりすぎて相手の罠にはまってしまい、裏を取られ、一発カウンターで逆襲を食らうというのは、サッカーではよくあること。この日も、それが出てしまった。
 前半にヴォルフスブルク先制。そして後半にも追加点。やべー、2点を入れられてしまった。これは痛い。
 
 シュトゥットガルトも必死に反撃を仕掛けるが、ヴォルフスの厚い守備に阻まれる。そしてジリジリと時間が経過していく・・・。
 
 残り時間が15分となったところで、シュトゥットガルトが1点を返した。うーん、ようやくか。でも厳しいなあ。なんとか同点になってほしいところだが・・・。
 
 サプライズが待っていた。それは奇跡と言っても良かった。
 わずか3、4分後に同点弾!! うわー追いついたぁ!!
 選手は諦めていない! 凄いぞ! 行け!行け! 逆転してしまえ!! サポーターの大声援で場内の盛り上がりは最高潮に。
 そして、絶頂の瞬間が訪れる。同点弾からわずか2分後に逆転弾!! どっひぇぇ! 
 
 スタジアムは興奮の坩堝と化した。私は、なんと、隣のオヤジと抱き合っていた!(笑)
 
 ゲーム終了。まるで優勝を決めたかのようなファンの喜びよう。いやあ、すんごい。いい物見せて頂きました。ダンケ、Vfb! オヤジ、アリガトね。
 
 
 この日はシュトゥットガルトに泊まらず、日帰りでフランクフルトに戻った。帰りの電車は、なんとまあ、ヴォルフスブルクからシュトゥットガルトまではるばる応援に駆けつけた数十人のサポーターと一緒だった。さすがに楽しそうではないが、だからといってこの世の終わりというわけでもなく、サバサバとした表情。勝つ時もあるけど負ける時もある。何よりも重要なのは、愛するクラブに忠誠を尽くし、応援に駆けつけること。素晴らしい連中。あんたら、カッコいいよ。お疲れ様でした(笑)。
 
 
 ゴールデンウィーク旅行記はこれでおしまい。(ようやく終わった(笑)。)