クラシック、オペラの粋を極める!

海外旅行はオペラが優先、コンサートが優先、観光二の次

2012/5/26 フォルクスオーパー

2012年5月26日  ウィーン・フォルクスオーパー   東京文化会館
指揮  エンリコ・ドヴィコ
演出  マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
クルト・シュライブマイヤー(ツェータ)、ユリア・コッチ(ヴァランシェンヌ)、アンネッテ・ダッシュ(ハンナ・グラヴァリ)、ダニエル・シュムッツハルト(ダニロ・ダニロヴィッチ)、メルツァード・モンタゼーリ(カミーユ)、ロベルト・マイヤー(ニェグシュ)    他
 
 
 私がなかなか上演されないような中級~上級者向けの作品に惹かれていることは皆さんも御存知かもしれないし、自分でもちゃんと自覚している。そんな私が万人向けのオペレッタだって大好き!と言っても、にわかに信じてくれないかもしれない。(実際、信じてくれない人がいる。私のよぉーーく知っている人で。)
 でも、オペレッタ、好きざんす。もっと言うと、ミュージカルも好きざんす。信じてくださいね。
 
 何と言っても親しみやすいメロディと、思わずウキウキしてしまう軽快な踊り。男と女の色恋沙汰、笑いあり、ドタバタあり、ほろっとさせる人情あり。
 そんなオペレッタの多彩な魅力が全部詰まっている名作、それが「メリー・ウィドウ」だ。
 特に、第3幕、ハンナ・グラヴァリ邸でのパーティで繰り広げられる華麗なフレンチ・カンカンは最高だよね。盛り上がりは最高潮。オペラグラスは必需品。オジサンたちは鼻の下を伸ばし、思わず前のめりになって・・・いや、いけません、客席で前屈みになっては。後ろの人の視界を妨げます。
 
 冗談はさておき、今回の公演で一際目立っていたのは、ニェグシュ役で舞台に登場し、主役を食ってしまうほどの達者な演技を披露したフォルクスオーパー総裁(!)ロベルト・マイヤー氏の役者ぶり。最後のカーテンコールでは、指揮者に代わってエンディング演奏のタクトを振るサプライズ・パフォーマンスを披露し、会場は万雷の拍手に包まれた。
 残念ながら鑑賞しなかったが、別の演目「こうもり」でもフロシュ役で登場して、会場を爆笑の渦に巻き込んだそうな。トップ自ら出演して会場を盛り上げ、上演の質を高めるとは、実に見上げた根性である。
 
 歌手の中で一番注目されたのが、ハンナ・グラヴァリ役のアンネッテ(アネッテ)・ダッシュ新国立劇場でも歌ったし、バレンボイム率いるベルリン州立歌劇場の来日公演でもドンナ・エルヴィーラを歌っているので、既に日本のファンにもおなじみだが、それよりも何よりもバイロイト音楽祭の現行ローエングリンのエルザに抜擢されたほどの逸材なのだ。そりゃもう、期待するなというのが無理ですな。
 
 で、結果は・・・うーーーむ・・・・(笑)。
 
 いや、良くなかったとは言わん。随所に「さすが!」と思わせるような節が見られた。若干、声域にムラがあることが気になったが、致命的ではない。
 
 一番の問題は、オペレッタで求められる独特のノリとテンションがイマイチだったこと。長いセリフもしっかりこなしていたし、一生懸命だった点は大いに評価するのだが・・・やっぱり普段とは勝手が違ったようだ。
 
 その点、劇場専属の歌手たちは堂々としてさすがの立ち回り。特にツェータ役のシュライブマイヤーはいい味を出していた。ダニロ役のシュムッツハルトは「今回の来日公演の最大の隠し玉」と言われたが、その噂は本物だった。そのうち「フォルクス」ではなく「シュターツ」にお呼びがかかってもいいのではないだろうか。
 
 舞台もほんの少しだけ現代的なデザインを採り入れつつエレガントさが感じられ、とても良かった。
 
 何よりも、この日来場したお客さんが、皆「楽しかった!」「面白かった!」という感想を持って幸せな気持ちで帰っていったに違いなく、そういう意味で公演は大成功だったわけだ。
 
 だが、一つだけ、ヤバいことがある。親しみやすいメロディを思わず口ずさみ、鼻歌を歌ってしまうと、それが頭の中でグルグルといつまでも回り続けてしまうのだ。
 実を言うと、今、この記事を書きながらも、「ラーラー、ラン、ララー、タラリラー、タンタン・・」とメリー・ウィドウの旋律が頭の中で鳴り響いている。誰か止めてくれ~!!